ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

カトリックの司祭が、イスラム教徒のモスクのために献金を集める。

ケルンの聖テオドール教会 St. Theodorの司祭フランツ・モイラーさん Franz Meurer が、何と同じ地区に住むムスリムのためにモスクを建てようと教会で献金を集めたそうです。

元々このアイデアは、このモイラーさん本人のものではなく、聖テオドール小教区 St. Theodor と聖エリザベス小教区 St. Elisabeth 合同の司牧評議会で提案されたものだそうです。1992年の地震で彼らの教会が壊れ、立て直した後、プロテスタントの兄妹から聖書を贈られたことを思い出し、自分たちも隣人に何か贈り物をしようと考え、モスク建設の援助を思いついたそうです。

この両小教区が属す地区は、ケルンのヘーエンベルクとフィンクスト Höhenberg und Vingst 略して「ヘーフィ HöVi」と呼ばれる地区だそうです。この地区では、失業率が25%に登り、住民23000人のうち4000人が社会保障を受けており、住民の三人に一人が外国人だそうです。そのため、司祭の家は、さながら社会保障の相談所のようになっているそうです。

この地区の聖職者が直面しているのは厳しい現実であり、そのため、モイラーさんは、食糧を配ったり、若者に性教育を行ったり、コンドーム(訂正:避妊用のピル)を配ったり、教会の脇にコンドームの自動販売機を置き、衣服を配ったり、社会保障など実践的な知識を知らせような本を共著で出版したりしているそうです。モイラーさんが、カトリック以外の人々も助けようとしているのは、このような現実があるからだそうです。

"Man muss mit denen zusammenarbeiten, die guten Willens sind", meint der Pfarrer. In einem Viertel, in dem fast jeder Dritte keinen deutschen Pass hat, ist das für ihn eine Überlebensfrage. "Wenn die Religionen kein Vorbild sind, gibt es keinen Frieden im Veedel."
「人は善意の人々と協力していかなければならないのです。」そう司祭は考えている。ほぼ3人に1人がドイツのパスポートを持っていないこの地区では、それは彼にとって生き残りをかけた問題なのだ。「もし宗教が模範にならないなら、この地区には平和はありません。」


SZ: Pfarrer sammelt für Moschee. Eine Investition in den Frieden 司祭がモスクのために集金する。平和への投資。


これに対するケルン司教区の反応は、当然ながら余り芳しいものではないようです。また、Tagesspiegel Online の記事にも、読者から批判的な書き込みが上がっています。

ただ、小教区の人々の多くは、この試みに賛成のようです。彼が教会でモスク建設のための献金を募ったところ、811,75ユーロが集まったそうです。モスク建設のためには微々たる金額ですが、この額は、普通の日曜日の献金の5倍ほどの額だそうです。また、日曜のミサには、大勢の人がつめかけているそうです。

この方は、聖職者としてもかなり変わっている人のようですが、今後このような試みがあちこちで起こってもおかしくはないと思います。ドイツ中のあちこちの郊外に、ヘーフィ地区のような失業と社会保障で特徴づけられる地区があり、その住民の多くは外国人だからです。教会が慈善行為を行う、あるいは社会問題に取り組もうとした場合、外国人に対する対応について否応なく考えざるをえないはずです。今回の件は、その問題に対する一つの答えだったのだろうと思います。