ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

アメリカでホワイトカラーになるには「勝者の振る舞い」とコネが必要

「ライフハッカー」というサイトで、「アメリカで、採用時に重要となる能力は?」という記事がありました。この記事によれば、以下の通りです。

問題解決能力と決定力…………………… 50%
口述と筆記でのコミュニケーション能力…… 44%
カスタマーサービスや記憶力……………… 34%
パフォーマンスや生産性…………………… 32%


他方、バーバラ・エーレンライクの『捨てられるホワイトカラー 格差社会アメリカで仕事を探すということ』東洋経済新報社、2007年によれば、アメリカでホワイトカラーになるためには、性格とコネが最も求められるそうです。

採用されるときに一番重視されるのはイメージなので、とにかく「勝者の振る舞い」をする、つまり自信たっぷりで、後ろ向きなところを欠片も見せない、ポジティブさの固まりのような態度でいることが求められるのだそうです。また、イメージが重要なので、見た目を良くすることが非常に重要なようです。

また、採用は、採用の権限を握る有力者の個人的な好き嫌いで決まるので、彼らと個人的なコネを作り、彼らに好かれることが重要なのだそうです。

つまり、アメリカで高給取りのホワイトカラーになるには、他人から良い印象を持たれることが一番重要のようです。

他方、仕事を実際にこなす能力があるかどうかは、エーレンライクの経験では、ほとんど全く問われなかったそうです。

ちなみにこの『捨てられるホワイトカラー』という本は、エーレンライクが就職活動をして失敗するまでを描いたルポルタージュです。エーレンライクは、企業では、合理主義が支配する軍隊のような場所だと思っていたら、全然違ったので驚いたようです。

ところが、実際に私が遭遇したのは、仮説と憶測が入り乱れた文化だった。それも、たとえば科学とかジャーナリズムとかいった、事実と理論にもとづく世界を下から支える仮説とは、まったく異なる仮説である。それは、検証もされていない習慣の中毒となった文化、従順さに麻痺した文化、呪術的な思考のはびこる文化だった。(297頁)

ビジネス本は、日本でもトンデモ本だらけですから、さもありなんとは思います。

私にはエーレンライクの経験が、どれくらい一般化できるのかどうか分かりませんが、この本は、カフカ的不条理感を読後に感じられる、抱腹絶倒すると同時に背筋が寒くなる面白い本だと思います。


バーバラ・エーレンライク『捨てられるホワイトカラー―格差社会アメリカで仕事を探すということ』東洋経済新報社、2007年