ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

ベネディクト16世とブラジルのカトリック

南米のカトリック教会は、解放の神学の影響を大きく受けており、バチカンとは緊張状態にあるようですが、先日教皇ベネディクト16世がブラジルを訪れたときも、相互の考えの不一致が見られたようです。

教皇、ブラジル訪問終える=共産主義と資本主義に警戒感

 【CJC=東京】5月9日からブラジルを訪問していた教皇ベネディクト十六世は13日、サンパウロ近郊アパレシーダで開かれたラテンアメリカ・カリブ司教協議会で演説した。
 貧困が残る中南米で、貧しい人々の支持を受けた過激な強権的な政治指導者が勢いを得ている一方、カトリック教会の影響力が低下している。教皇は、共産主義と資本主義が南米の問題の元凶であるとの認識を示し、新世代の指導者を育成するよう聖職者らに促した。この日も「教会は貧しき者の守護者だ」と述べながら、その役割は「政治的指導者でも社会運動でも経済システムでもない。それは神の愛、キリストの死と復活への信仰だ」と述べ、政治と距離を置く姿勢を強調した。
 教皇はさらに、南米の政界やメディア、大学で指導力を発揮する敬けんなカトリック信徒が必要だと発言。何百万人のカトリック信徒が、プロテスタントペンテコステ派に転向している傾向に歯止めをかける必要性も強調した。

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このような教皇の態度に対し、チリの「解放神学」者パブロ・リカルド氏はこのような意見を持っているそうです。

◎教会は変わらねばならない、と「解放の神学」者

 【CJC=東京】全世界11億人のカトリック信者のほぼ半数はラテンアメリカ中南米)各国にいる。そこで正義を実現しようとするなら、教会は、劇的に変化する必要がある、とチリの「解放神学」者パブロ・リカルド氏は言う。(中略)
 リカルド氏は、5月13日にアパレシーダ教皇ベネディクト十六世が開会した第5回ラテンアメリカ・カリブ司教協議会に呼応して18日から20日までピンダモニャンガバで開かれた『ラテンアメリカ神学セミナー』で講演した。
 セミナーには、教会改革について議論するためブラジル、ペルー、アルゼンチン、コロンビア、エクアドル、メキシコ、パラグアイなどから200人が参加した。
 毎年、ブラジルでは100万人がカトリック教会から離れる。
 「今日のカトリック教会では、恐れが支配している。教会は、世界から隔離して自身の中にこもってしまった。問題は全て外側にあると思い、自己批判が出来ない」と、リカルド氏。急成長するペンテコステ派福音派の運動に言及して、「教会はセクトと非難するが、現実には、教会から離れる信者の8割は、教会が何ら語るべきものを持っていないからこそそうするのだ。教会のモデルは変えら
れる。信者の大多数は今日、世界の北・西にではなく東・南にいることに気づかなければならない。それには真底から西側的な、富裕国で発生した支配的な文化モデルを壊すことが必要だ」と述べた。
 セミナー会場のピンダモニャンガバから司教協議会が行われたアパレシーダに向けて、19日夜間行進が行われたが、セミナー参加者も合流した。
 行進では「強制移住反対」「アマゾンの生活を守れ」「貧乏が世界からなくなるまで、解放の神学は残る」などのプラカードやポスターが掲げられていた。
 教皇ベネディクト十六世は、ヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿として、またバチカンローマ教皇庁)教理省長官として、ラテンアメリカで展開した解放の神学を、マルキシストの社会分析に影響された動きとして厳しく批判していたことで知られる

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このセミナーや行進がどの程度の規模で、どれくらいのカトリック信者の意見を代表しているものかはわかりませんが、エキュメニズムが進む一方で、同宗派内での不和もまた存在しているのは確かなようです。やはりカトリック教会くらいの超巨大組織になると色々大変なようです。