ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

双曲割引説への批判は妥当か?

山形浩生氏が翻訳を手掛けたジョージ・エインズリーの『誘惑される意志』(NTT出版、2006年)は、大変面白い本です。この本では、人間が短期的な欲望に負けやすいのは、人間が利益を時間が進むに従って双曲線的に割り引く、つまり現在の利益を大きく見積もり、…

必要なくなる製本技術

海外から19世紀末に出版された古い本を買ったのですが、まだ裁断もされていない本でした。このままでは読めないので、製本をしてくれる業者を捜しました。ネットで調べて何軒かに電話したのですが、ハードカバーの製本はやっていないとか、厚すぎるからで…

海外の中世史家のブログ

海外の中世史家のブログのリストです。 Medievalist Weblogs コメントを書いたり、トラックバックすれば、簡単に海外の研究者と交流できますね。

殉教者とセンチネル

自らの信仰を貫いて死んだ殉教者、国のために戦い死んだ兵士、歴史を守るために命を顧みなかったオハラの学者たち*1 など、理念や他人のために身を投じるという自己犠牲を、我々が崇高だと感じ、それを行う者の姿に感動を覚えるのは何故でしょうか。人間が社…

仙台の殉教者

仙台の広瀬川にかかる大橋の近くに、伊達政宗の時代に殉教したキリスト教徒の像があります。*1 仙台藩主、伊達政宗の時代のことである。徳川幕府のキリシタン弾圧によって、仙台藩に囚われの身となっていたカルワリオ神父ら9人は、元和9年も押し迫った大晦…

ボードリヤールとシオラン

猫屋さんのところで、ル・モンドのボードリヤール記事が翻訳されています。これは凄い!ポール・ヴィリリオのインタビューから。 作品のなかに、その孤独の跡を見ることはできますか?はい、なぜなら彼は、シオランのすぐとなりに並べうる懐疑の哲学者だった…

意図と結果は必ずしも一致しない

塩川伸明先生による市野川容孝『思考のフロンティア 社会』(岩波書店、2006年)の書評から。(on the ground 経由) 誤解を防ぐために断わっておかねばならないが、このように指摘するからといって、私はレーニンが民主主義者だったとかレーニン主義が民主的…

爆弾より受胎調節のほうが世界を変える

日々平安録さんのI・ブルマ&A・マルガリート「反西洋思想」新潮新書2006年6月の読書メモの中で、エマニュアル・トッドの説が紹介されていました。 西洋とイスラム圏の女性の扱いの差は、何に起因するのだろうか。「帝国以後」においてトッドは、「風…

『講座 日本のキリスト教芸術 2美術・建築』

id:antonian さんが、『講座 日本のキリスト教芸術 2美術・建築』という本を紹介していました。 いやはや、内容を読んだが、正直がっかりである。というのも日本のキリスト教芸術がやはり貧弱だったということを自覚せざるを得なかったわけだが、建築もなの…

池上俊一『ヨーロッパ中世の宗教運動』

ヨーロッパ中世の宗教運動池上俊一著A5判・上製・752頁 '07/3 7,600円(税別)名古屋大学出版会隠修士、カタリ派、少年十字軍、ベギン会、鞭打ち苦行団、千年王国運動―ヨーロッパ中世社会が希求した霊性>のあり方を民衆的な宗教運動に探り、初期から末期まで…

ダーウィンと現代カトリック教会

1997年に開催された「キリスト教と文化研究所・科学史フォーラム」で、キリスト教と文化研究所 研究員 藤井清久氏が行った「ダーウィンと現代カトリック教会」という講演では、カトリック教会の進化論に対する態度が概観されています。 1 『種の起源』…

世俗化のパラドックス、あるいはブッシュとブレア(とアル・カイーダ)の宗教

Living, Loving, Thinkingさんのところで、International Herald Tribune の「The twisted religion of Blair and Bush」(Phillip Blond and Adrian Pabst International Herald Tribune FRIDAY, MARCH 10, 2006) という記事が紹介されていました。 さらに、…

上祐史浩氏の考えの変化

オウム事件で一世を風靡した上祐史浩氏が、オウム真理教の後継教団アーレフを離れるという報道は、皆様御存知のことと思いますが、その上祐氏がオフィシャルサイトを作っています。そこで、雑誌のインタビューが再録されており、彼のオウム事件後の心境につ…

池田晶子氏死去

哲学者の池田晶子さんが、46歳の若さで亡くなってしまいました。(「asahi.com」(「尼克拉斯魯曼全百科」経由))池田晶子さんと言えば、個人的にはファッション誌「marie claire」上での埴谷雄高との対談を真っ先に思い出します。1990年代の初め頃だっ…

マルチエージェント・シミュレータ KK-MAS/artisoc

「マルチエージェント・シミュレータ KK-MAS/artisoc」という複雑系シミュレータがあるそうです。長期的に歴史学の発展を考えた場合、特に史料が足りない時代の研究で、コンピューターシミュレーションの存在感は次第に増していくことになるのではないかとも…