ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

宗教改革の新しい研究を知るための日本語文献ガイド

note で「宗教改革の新しい研究を知るための日本語文献ガイド」を書きました。宗教改革について関心がある方には役立つ内容になっています。

 

note.mu

宗教改革についてまだ余り良く知らず、最初に何を読もうかと迷っている方は、以前ブログで書いた記事もご覧下さい。

saisenreiha.hatenablog.com

 

 

海外出版社が出している電子書籍の形式

私はヨーロッパの歴史を研究しているので、海外の出版社が出している本を買う機会が多いのですが、既にうちは本で埋まっているので、なるべく紙ではなく電子書籍を買いたいと思っています。

幸い海外で出される学術書の大半は、電子書籍で買うことができます。一番手軽なのは、Amazon.co.jpKindle の本を買うことです。読みやすいですし、ハイライトやメモも簡単につけられて便利ですが、論文などで引用するときページ数を書きにくいという欠点もあります。そうすると、pdf で買えるなら買いたいと思ってしまいます。また、欲しい本が Kindle で売っていない場合もあります。

そのため私は、海外の出版社のサイトで、直接電子書籍を購入することもあります。しかし、電子書籍の形式は、各出版社で違いますし、出版社によっては電子書籍の形式をはっきり書いてくれていないところもあるし、値段が高い本が多いので、はじめて買う場合は結構勇気がいります。

そのため、この記事では、備忘録も兼ねて、これまで自分が買った出版社の電子書籍の形式をメモしていきます。

 

 

De Gruyter

形式:EPUBとpdf(本の場合分割してダウンロード)

購入した本

Dagmer Freist, Glaube - Liebe - Zwietracht. Religiös-konfessionell gemischte Ehen in der frühe Neuzeit, 2017

 

Springer

形式:pdf

購入した本:

www.springer.com

 

C. H. Beck

形式:EPUB(出版社のサイトではなく、書店サイトで購入)

購入した本

Volker Reinhardt, Pontifex. Die Geschichte der Päpste, München 2017

 

今後も随時更新予定です。

永本哲也『ミュンスター宗教改革ー1525~34年反教権主義的騒擾、宗教改革・再洗礼派運動の全体像ー』発売

私の初の単著、『ミュンスター宗教改革ー1525~34年反教権主義的騒擾、宗教改革・再洗礼派運動の全体像ー』が、東北大学出版会から出版されました。ミュンスター宗教改革を扱った日本ではじめての研究書になります。日本でも倉塚平先生が『政経論叢』に連載していた「ミュンスター千年王国前史1〜8」という偉大な研究がありますが、何とかこの高すぎる壁を越えようと力を尽くして書きました。

すでに、東北大学出版会のサイトで注文することができます。
https://www.tups.jp/book/book.php?id=370

WEB書店では、honto で注文すると1〜3日で発送されるようです。
https://honto.jp/netstore/pd-book_29075671.html

6480円と高価な本なので、読みたい方はぜひお近くの公共図書館、あるいは大学図書館にリクエストをして見て下さい。

本の紹介と目次は、以下の通りです。


一都市の宗教改革運動は、なぜ欧州史に残る特異な事件となったのか?徹底したテクスト読解と時代背景を織り込んだ解釈から、ミュンスターで起きた再洗礼派運動を宗教改革の全体図に位置付ける。

1534年2月、ドイツ北西部の一都市ミュンスターは、地上に降りた新しきエルサレムと化した。神聖ローマ帝国において「異端」「反乱者」として死をもって禁じられていた再洗礼派が、ミュンスター統治権を握ったためである。彼らは間近に迫った世界の終わりを待ちわびながら、財産共有制や一夫多妻制、預言者を頂点とする神権政を市内で導入し、16ヶ月にわたり帝国諸侯の軍隊と黙示録的な戦いを繰り広げた。
しかし、このミュンスター再洗礼派運動は、元々ありふれた都市宗教改革運動として始まった。では、ミュンスター宗教改革を実現しようとした人々は、いかにして再洗礼派となり、市内で起こった激しい宗派間争いの末、敗北と紙一重の勝利をその手に引き寄せたのか?市内には多様な集団・社会階層に属する人々がおり、様々な動機に基づき自らの態度を決めていた。彼らの多様な思惑と行動が、複雑にもつれ、絡まりあいながら、ミュンスター宗教改革運動を思わぬ方向へと導いた。本書は、集団や階層、動機、合意形成という三つの枠組みに整理して、その複雑な過程の全体像を描こうとする一つの試みである。


《目 次》
1章 はじめに
1 特異な事件
2 異端、反乱者、悪魔
3 時代区分
4 宗教改革の統一性と多様性

2章 課題と方法
1 都市宗教改革研究の課題
2 ミュンスター宗教改革・再洗礼派運動研究の課題
3 分析方法
4 史料
5 用語
6 ミュンスター市の統治制度の基本的特徴

3章 1525 年の反教権主義的騒擾
1 事件の経過
 1.1 修道院に対する反教権主義的示威行動
 1.2 ギルドによる市参事会への抗議と要求
 1.3 市民要求の実行
 1.4 市民要求をめぐる市参事会と司教との交渉
2 市内諸勢力の主張と行動、運動の全体像
 2.1 市内諸勢力の主張と行動
 2.2 運動の全体像

4章 1530-33 年の宗教改革運動
1 事件の経過
 1.1 宗教改革運動の拡大
 1.2 全ギルド会議での議論と市民委員会結成
 1.3 全ギルド会議と市参事会の交渉と協定締結
 1.4 市内での宗教改革実行と市外諸勢力との交渉
2 市内諸勢力の主張と行動、運動の全体像
 2.1 市内諸勢力の主張と行動
 2.2 運動の全体像

5章 1533-34 年の宗派分裂と再洗礼派運動
1 事件の経過
 1.1 宗教改革の制度化
 1.2 二つのサクラメントをめぐる市内での宗派対立
 1.3 市内での三宗派対立の激化
 1.4 再洗礼派共同体の成立と再洗礼派統治の始まり
2 再洗礼派の社会階層
 2.1 分析方法
 2.2 再洗礼派の社会階層
3 市内諸勢力の主張と行動、運動の全体像
 3.1 市内諸勢力の主張と行動
 3.2 運動の全体像

6章 ミュンスターにおける社会運動の全体像 〜通時的分析〜
1 市内諸勢力の主張と行動
 1.1 市参事会の主張と行動
 1.2 全ギルド会議の主張と行動
 1.3 ゲマインハイトの主張と行動
 1.4 ギルドの主張と行動
 1.5 市区・教区民の主張と行動
 1.6 門閥市民の主張と行動
 1.7 二流の名望家の主張と行動
 1.8 市民の主張と行動
 1.9 アインヴォーナー男性の主張と行動
 1.10 女性の主張と行動
2. 運動の全体像
 2.1 運動参加者の属性
 2.2 運動参加者の動機
 2.3 合意形成

7章 おわりに
1 時間的な位置づけ 393
 1.1 中世後期から近世にかけての連続性と変化
 1.2 宗教改革運動における1525-34 年
2 多様な宗教改革の中の位置づけ
 2.1 特異とは言えない都市宗教改革運動
 2.2 ミュンスター宗教改革の特異性の原因
3 宗教改革の複雑さ

略年表
参考文献
あとがき
索引

多宗派併存都市ノイヴィートでの調査

私は2月26日から3月10日までドイツ西部ライン川沿いの都市ノイヴィートで史料調査を行っていました。今回の調査の目的は、近世ノイヴィートに関する史資料の閲覧・入手です。ノイヴィートは人口6万5千人の小都市で、はじめて都市名を聞いたという人も多いかと思います。

では、何故私がノイヴィートに調査に来たのかというと、17〜18世紀に異なった宗派に属する住民の共生や争いについて知りたいからです。1653年に作られた新造都市ノイヴィートで支配的な教会は改革派でしたが、建造間もない時期からルター派カトリックユダヤ人や再洗礼派の一派メノー派も居住していました。

18世紀半ばにはさらに霊感派とヘルンフート兄弟団も市内に移住してきたので、市内には7つの宗教集団が併存することになりました。そのため、近世において、異なった信仰をもつ人々たちがどのように関係を結んでいたのかを知るには格好の対象だと思い、関心を持ちました。

しかし、単に興味を持つだけでなく、本格的に調査し始めたのには、いくつかの理由があります。一番大きな理由は、共編著『旅する教会 再洗礼派と宗教改革』をはじめとした自分の原稿で書きながら色々と気になることがあったためです。

元々私がノイヴィートのことを知ったのは、新教出版社の雑誌『福音と世界』で行った連載「旅する教会」のために、現代までの再洗礼派の歴史を調べたことがきっかけでした。その時近世にメノー派が住んでいた都市について少し調べたのですが、その中にノイヴィートも含まれていました。

結局紙幅の問題で連載では扱えませんでしたが、2017年に単行本化した『旅する教会 再洗礼派と宗教改革』では、ノイヴィートを含めメノー派が住んでいた神聖ローマ帝国の多宗派併存都市を紹介することができました。

ただし、調査や執筆の時間も限られ、本が扱う範囲も広かったので、十分な調査ができず残念に思っていました。帝国の都市の宗派状況については少ししか触れられなかったし、もっと掘り下げてきちんと調べたいと思っていました。

帝国の多宗派併存都市を調べたいという思いは、その後『福音と世界』2017年3月号で、やはり18世紀までの再洗礼派を取り巻く状況を描いた「曖昧になる「正統」と「異端」の境界」という原稿を書いたことで、より大きくなりました。

さらに、17〜18世紀の宗派状況を含めた「長期の宗教改革」研究を把握することは、これから自分が宗教改革研究者として研究を続けていくためにも、必要不可欠だと思ったことも理由として挙げられます。

『UP』での連載「広がる宗教改革」第二回で鍵和田賢さんが宗教改革研究の対象が、近年18世紀あるいはその後にまで広がっていることを紹介していましたが、この「長期の宗教改革」は、現在急激に研究が進んでいる分野で、私も何とか食らいつかねばと思っています。

また、大学の教員としても、17〜18世紀をもっと本格的に調べたいと思っていました。私は大学でキリスト教の通史を教えているのですが、やはり近世から近代にかけて、宗教的寛容がいかに進み、政教分離が実現したかを、近年の研究成果を取り入れながら授業できるようになる必要を感じています。

しかし、研究・教育上の関心だけでなく、現代の世界が抱える問題に近世と共通する部分があると感じたこともこのテーマに着手した大きな理由だったかもしれません。

私は、『Ministry』2017年5月号の「異質な人々とどうやって生きていくのか?−宗教改革後のヨーロッパと現代」という原稿で、近世の西欧でも現代の世界でも異質な人々が混じりあう状況にうまく対応できていない点では共通しているのではないかと書きましたが、このような状況を前にもやもやし続けています。

ということで昨年からノイヴィートについて本格的に調査を始め、上廣倫理財団様の研究助成に採択していただいたため、今回ノイヴィートで現地調査を行っています。

今回の調査では、特に宗派間の争いとその解決方法に注目しています。ノイヴィートは近世に宗教的寛容が実現した都市として扱われることが多いのですが、実際には様々な理由で宗派間の争いも行われていました。

しかし、近世ノイヴィートの宗教的寛容を扱う研究自体少なく、争いをきちんと分析した研究はまだ出ていないので、試しにやってみようと思いました。ただ、調査を進めてきて、ノイヴィートに関する研究が少ない理由は何となく分かってきました。一番大きな理由は、おそらく史料へのアクセスです。

近世ノイヴィートの重要史料はほとんどヴィート侯文書館Fürstlich Wiedische Archivにあります。現在利用には予約が必要、基本的に毎週水曜しか開いておらず複写もできません。もちろん利用させていただけるだけありがたいのですが、公立の文書館と比べ、利用状況が厳しいのは確かです。
https://www.landeshauptarchiv.de/service/archive-im-suedwesten/?no_cache=1&tx_lhaarchivportal2010_pi1%5BshowList%5D=1&tx_lhaarchivportal2010_pi1%5BarchiveId%5D=9

また、各宗教団体、牧師や司祭が持っている史料を使った研究もありますが、こちらは部外者にとって利用するハードルがより一層高いです。

さらに、ノイヴィートに関する重要な史料は、史料集として刊行されておらず、様々な文献で断片的に活字になっているだけです。大半の史料は文書館で手書き文書を読むしかないので、調査を進めるのはかなり大変です。

ただし、ヴィート侯文書館の史料を主に利用してボン大学で博論を出したRoland Schlüterが著書Calvinismus am Mittelrhein, 2010の序文で述べているように、文書館の文書の大半はまだ利用されておらず、面白い研究をする余地が大きいのは魅力です。

ヴィート侯文書館の所蔵資料のカタログは、1911年に刊行されているので、だいたいの所蔵品は把握することができます。文書館には、手書きのカタログもあります。文書館員の方も、非常に親切で、いろいろと調査を助けてくれます。
http://opac.regesta-imperii.de/lang_de/anzeige.php?sachtitelwerk=F%C3%BCrstlich+Wiedisches+Archiv+zu+Neuwied.+Urkundenregesten+und+Akteninventar&pk=8227

ちなみに私の今回の調査で主に調べているのは、ヴィート伯の書記局長Christian Hiskias Heinrich Fischerが1777年に書いたノイヴィートの宗教状況に関する手書きの著作と、1751から53年にかけて起こった武器を持った市民行列をめぐる市当局と霊感派の争いに関する史料です。

先週水曜に文書館に行ったときには、事前に見たい史料を連絡していたので、文書館員の方がすでにフィッシャーの著作を準備してくださっていました。

しかし、市民行列に関する史料は、このテーマを扱った研究Fritz Voß, Bürgerwehr in Neuwied, 1936 に史料の出典がきちんと書かれていなかったため、文書館員の方も見つけられていません。これからの調査で史料のありかを探すことになります。

ノイヴィートの法的な発展を扱ったHans Wilhelm Stupp, Die rechtsgeschichtliche Entwicklung der Stadt Neuwied, 1959, 19f., 41f. でも、市民行列をめぐる争いを扱っていますが、やはりフォスの研究を参照しているだけなので出典は分かりません。

しかし、今回の史料調査の結果、FWA 65/11/13 という1731年から51年までの霊感派に関する史料を綴じた冊子に、この争いに関する手紙が含まれていました。時間がなくて全部確認できませんでしたが、1751年の霊感派や都市シュルトハイスWeberの手紙がありました。フィッシャーの著作の中にも、この件についての記述がありました。

それ以外にも宗派間の争いは、他宗派の信徒への中傷、埋葬、礼拝への参加、教会や学校の建造など、いろいろな理由で起こっているので、こちらも並行して調べています。

ノイヴィートやボンで、様々な文献やパンフレットも発見・入手できたので、刊行された研究や史料についてはかなりの程度収集が進みました。

今回は研究助成をいただいて調査・研究を行っているので、なるべくその成果を知っていただけるように、ノイヴィートや近世の宗派状況に関する情報や文献、史料について、Twitter やブログなどで紹介していこうと思っています。もちろん、最終的には学術論文としてまとめるつもりです。

連載「広がる宗教改革」

東京大学のPR誌『UP』で、私を含む4人の研究者で、2017年9〜12月まで四回にわたり「広がる宗教改革」という連載を行います。「広がる宗教改革」は、宗教改革500周年の今年、宗教改革研究の新しい動向を紹介しようという企画です。

第一回は、原田晶子「中世後期への拡大 中世と連続する大変革」です。近年の宗教改革研究では、宗教改革を中世と近代の分水嶺だと理解するのではなく、中世後期から宗教改革期は連続していたという側面を強調するようになっています。この回では、ドイツの神学者ベルント・ハムの「中心的規範への指向」論を中心に、中世後期と宗教改革期の関係について見て行きます。

http://www.utp.or.jp/book/b313416.html

日本語の再洗礼派・宗教改革少数派文献リスト

少し前に、共編著『旅する教会 再洗礼派と宗教改革』を出版しました。この本は、16世紀から現代にかけての再洗礼派の歴史を概観したものです。

この本には、各章に註のかたちで参考文献がつけてありますが、基本的に、各著者が自分が直接参考にした文献を紹介しているので、各テーマに関する重要な文献を網羅的に挙げているわけではありません。また、紙幅の都合もあり、この本には詳細な文献案内をつけませんでした。

そのため、再洗礼派に関心があり、もっと色々調べてみたいという方のために、日本語で読める再洗礼派関連の文献リストを作ってみました。まだまだ網羅的なリストになっていませんが、これから暇を見て随時追加していこうと思います。

1990年代半ばまでのミュンツァー、カールシュタット、農民戦争、再洗礼派に関する文献については、『宗教改革著作集15 教会規定・年表・地図・参考文献目録』1998年、210-222頁にまとめられているので、こちらも是非ご参照下さい。

日本メノナイト教会協議会のサイトの「アナバプテスト関連図書」にも、多くの再洗礼派関連の本が紹介されています。
http://www.mennonite.jp/resources/%e3%82%a2%e3%83%8a%e3%83%90%e3%83%97%e3%83%86%e3%82%b9%e3%83%88%e9%96%a2%e9%80%a3%e5%9b%b3%e6%9b%b8/


研究史整理

  • 倉塚平「序説 ラディカル・リフォーメーション研究史」倉塚平、田中真造他編訳『宗教改革急進派 ラディカル・リフォメーションの思想と行動』ヨルダン社、1972年、5-61頁。
  • 踊共二「再洗礼派運動と農民戦争」『史潮』新23号、1988年、89-101頁。
  • 踊共二「宗教改革急進派−その起源と宗派化の諸相」森田安一編『ヨーロッパ宗教改革の連携と断絶』教文館、2009年、41-54頁。
  • 出村彰「解説」出村彰、森田安一、倉塚平、矢口以文訳『宗教改革著作集 第8巻再洗礼派』教文館、1992年、493-510頁。


再洗礼派全般

  • 倉塚平『異端と殉教』筑摩書房、1972年。
  • 倉塚平、田中真造他編訳『宗教改革急進派 ラディカル・リフォメーションの思想と行動』ヨルダン社、1972年。
  • 倉塚平「再洗礼派の二王国論とその現実形態(上)」『思想』603、1974年9月、74-92頁。
  • 倉塚平「再洗礼派の二王国論とその現実形態(下)」『思想』607、1975年1月、12-36頁。
  • 坂井信生『聖なる共同体の人々』九州大学出版会、2007年。(現代のアーミシュ、フッター派、メノー派を扱った研究。)
  • 榊原巌『アナバプティスト派古典時代の歴史的研究』平凡社、1972年。
  • 出村彰『再洗礼派 宗教改革時代のラディカリストたち』日本基督教団出版局、1970年。
  • 出村彰、森田安一、倉塚平、矢口以文訳『宗教改革著作集 第8巻再洗礼派』教文館、1992年。
  • 中村賢二郎「宗教改革と急進的宗教改革派」同『宗教改革と国家』ミネルヴァ書房、1976年、167-244頁。(スイス再洗礼派、フート、南ドイツ再洗礼派の終末観、スイス兄弟団、フッター派、ハンス・レーマー、フートの世俗に対する態度と社会層を扱っている。)
  • 永本哲也、猪刈由紀、早川朝子、山本大丙編『旅する教会 再洗礼派と宗教改革新教出版社、2017年。(16世紀から現代までの再洗礼派の歴史の概説。)
  • 深井智朗『プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで』中公新書、2017年。(再洗礼派やバプテスト等「洗礼主義」を「新プロテスタント」と捉え、リベラリズムの源流だとする。)


史料


再洗礼派の思想

  • W. クラーセン著、野村竹二訳『もう一つの宗教改革−アナバプテストの生きた道−』シャローム出版、1992年。
  • アーノルド・スナイダー著、中川美弥子、矢口以文訳、東條隆進監修『イエスの足跡に従う−アナバプテストの伝統−』東京ミッション研究所、2013年。(再洗礼派の霊性を扱った著作。)
  • ロバート・フリードマン著、榊原巌訳『アナバプティズムの神学』平凡社、1975年。


アンドレアス・ボーデンシュタイン・カールシュタット

  • 小田部進一「初期宗教改革における新しい信徒像 : アンドレアス・ボーデンシュタイン・フォン・カールシュタットの木版画ビラ『馬車』(1519年)を手がかりにして」『神学研究』52、2005年、115-128頁。
  • 小田部進一「カールシュタットにおける改革運動の神学的契機―『聖画像の撤去について』(1525年)を手がかりにして―」『キリスト教史学』62、2008年7月、90-119頁。
  • 倉松功『ルター、ミュンツァー、カールシュタット《その生涯と神学思想の比較》』聖文舎、1973年、1981年改訂3版。
  • 田中真造、松山與志雄、倉松功、宮庄哲夫、前間良爾訳『宗教改革著作集7 ミュンツァー、カールシュタット、農民戦争』教文舘、1985年。


トーマス・ミュンツァー


スイス再洗礼派

  • 踊共二「スイス再洗礼派と農民戦争」『歴史学研究』587、1988年、56-66頁。
  • 踊共二「再洗礼派運動と農民戦争―ミヒャエル・ザトラーの場合―」『歴史学研究』626、1991年、87-96頁。
  • 榊原巌『コンラット・グレーベル伝』平凡社、1982年。(スイス再洗礼派の最初期の指導者グレーベルの伝記。)
  • 森田安一「チューリッヒにおける再洗礼派運動について―ツヴィングリ主義による宗教改革の一側面」『史学雑誌』76-11、1967年、1-40頁。
  • 森田安一「スイス人文主義の一側面―ツヴィングリ、ヴァディアン、グレーベル―」『日本女子大学紀要 文学部』55、2005年、43-60頁。


バルタザル・フープマイアー


南ドイツ再洗礼派


フッター派

  • 坂井信生『聖なる共同体の人々』九州大学出版会、2007年、87-149頁。(現代の北米や日本のフッター派を扱った研究。)
  • 榊原巌『殉教と亡命 フッタライトの450年』平凡社、1967年。(フッター派の歴史を概観した研究。)
  • 滝口克典「16世紀後半におけるフッター派の「良き秩序」構想」『山形大学歴史・地理・人類学論集』創刊号、2000年、1-32頁。
  • ペーター・リーデマン著、榊原巌訳『フッタライト派信仰告白平凡社、1977年。(初期のフッター派指導者リーデマンによる信仰告白の翻訳。)
  • 小坂幸三『アーミシュとフッタライト 近代化への対応と生き残り戦略』明石書店、2017年。


心霊主義

  • 金子晴勇『ルターの霊性思想』教文館、2009年、271-187頁。(ルターとミュンツァー、フランク、シュヴェンクフェルトといった心霊主義者の思想を扱った小論考。)


カスパー・シュヴェンクフェルト

  • 山本大丙「真の信仰は決して強制され得ない シュヴェンクフェルト派の形成」永本哲也、猪刈由紀、早川朝子、山本大丙編『旅する教会 再洗礼派と宗教改革新教出版社、2017年、210-217頁。
  • 木塚隆志「C. シュヴェンクフェルトにおける黙示録的歴史解釈」木塚隆志トーマス・ミュンツァーと黙示録的終末観』未來社、2001年、155-178頁。


セバスティアン・フランク


ミュンスター再洗礼派


下ライン地方再洗礼派

  • 永本哲也「 1534年2月下ライン地方における宗教改革思想・再洗礼主義の伝播 〜ヤコブ・フォン・オッセンブルクによるミュンスター再洗礼派の宣教分析を通じて〜」『エクフラシス』3、2013年、161-177頁。(ミュンスターでの再洗礼派統治開始直後の下ライン地方での宣教を扱った研究。)


低地地方再洗礼派

  • 倉塚平「ミュンスター再洗礼派王国論(1)」『政経論叢』明治大学政治経済研究所紀要56巻5/6号、1988年、1-119頁。
  • 栗原健「獄中書簡に見るネーデルラント再洗礼派女性の信仰」『日蘭学会会誌』26-1 (通巻48巻)、2001年10月、1-15頁。
  • 栗原健「ネーデルラント再洗礼派信徒の獄中書簡―その信憑性と史料価値―」『日蘭学会会誌』29-1 (通巻52巻)、2004年10月、105-108頁。
  • 松田洋子「16世紀ネーデルラントにおける宗教政策の一側面―フロニンゲン州の再洗礼派対策を中心に―」『日蘭学会会誌』11-2 (通巻22号)、1987年、43-59頁。
  • 山本大丙「近世オランダ共和国のメノー派商人」『創文』514、2008年11月、19-22頁。


メノー・シモンズ

  • 村上みか「メノ・シモンズにおける「国家と教会」−宗教改革期における政教分離思想の萌芽−」『人文学と神学』8、2015年、1-15頁。(メノーの国家と教会の理解が近代的な政教分離に通じる要素を含んでいると指摘した論文)


ミカエル・セルヴェトゥス


ユダヤ

  • 森田安一「近世ドイツ語圏に見られるトルコ人ユダヤ人観―ルターを中心に― 」深沢克己編『ユーラシア諸宗教の関係史論 他者の受容、他者の排除』勉誠出版、2010年、261-280頁。


トルコ人


プロイセン再洗礼派

  • 石坂昭雄「ヴェストプロイセンにおけるネーデルラント系メンノー派コロニーの形成とその経済活動(1525-1772)-1-」『経済学研究』34(4)、1985年、33-53頁。
  • 石坂昭雄「ヴェストプロイセンにおけるネーデルラント系メンノー派コロニーの形成とその経済活動(1525-1772)-2-」『経済学研究』35(1)、1985年、17-33頁。
  • 石坂昭雄「ヴェストプロイセンにおけるネーデルラント系メンノー派コロニーの形成とその経済活動(1525-1772)-3-」『経済学研究』35(2)、1985年、28-57頁。


アーミシュ

  • 踊共二「アーミシュの起源 : 寛容思想史の視点から」『武蔵大学人文学会』2012年度・第44巻 第1・2号、91-115頁。
  • 坂井信生『アーミシュ研究』教文館、1977年。(アーミシュの歴史や特性を扱った重要な研究書。)
  • 坂井信生『聖なる共同体の人々』九州大学出版会、2007年、87-149頁。(現代の北米のアーミシュを扱った研究。)
  • リチャード・T.シェーファー、ウィリアム・W.ゼルナー著 、徳永真紀,、松野亜希子訳『脱文明のユートピアを求めて』筑摩書房、2015年、80-142頁。(社会学者による北米のオールド・オーダー・アーミシュの概説。)
  • 関哲行、踊共二『忘れられたマイノリティ 迫害と共生のヨーロッパ史山川出版社、2016年。
  • 大河原眞美『アメリカ史のなかのアーミッシュ 成立の起源から「社会的忌避」をめぐる分裂・分立の歴史まで』明石書店、2018年。
  • 小坂幸三『アーミシュとフッタライト 近代化への対応と生き残り戦略』明石書店、2017年。


ブレザレン教会

  • ハンス・シュナイダー著、芝田豊彦訳『ドイツにおけるラディカルな敬虔主義』関西大学出版部、2013年。


北米メノー派

  • 鈴木七美「キリスト教非暴力と平和主義の底流 再洗礼派メノナイト/アーミシュ」綾部恒雄監修・編『結社の世界史5 クラブが創った国アメリカ』山川出版社、2005年、84-96頁。


ラテンアメリカ再洗礼派

  • 国本伊代「メキシコにおけるメノナイト信徒集団―キリスト教プロテスタント再洗礼派のメキシコ移住の経緯と現状」『中央大学論集』19、1998年3月、31-47頁。
  • 国本伊代「ボリビアにおけるメノナイト信徒集団―キリスト教プロテスタント再洗礼派が辿り着いた最後の新天地―」『中央大学論集』20、1999年5月、93-105頁。
  • 国本伊代「パラグアイにおけるメノナイト信徒集団―キリスト教プロテスタント再洗礼派に変貌を強いた歴史的背景と現状―」『中央大学論集』22、2001年3月、45-60頁。
  • 国本伊代「ベリーズにおけるメノナイト信徒集団―キリスト教再洗礼派が熱帯低地に求めた新天地の建設と変貌―」『中央大学論集』24、2003年3月、55-71頁。
  • 国本伊代「アルゼンチンにおけるメノナイト信徒集団―キリスト教再洗礼派の探した新天地ラパンパ州ヌエバエスペランサ・コロニーが経験した国家との対決―」『中央大学論集』25、2004年3月、75-91頁。
  • 国本伊代「ブラジルのメノナイト―南部パラナ州におけるロシア難民メノナイトの定住過程―」『中央大学論集』29、2008年2月、25-45頁。
  • 坂井信生『聖なる共同体の人々』九州大学出版会、2007年、87-149頁。(現代のメキシコのメノー派を扱った研究。)


日本の再洗礼派

  • ドイル・ブック著、岡崎寛人訳『敷居が高い 日本におけるキリスト兄弟団の歩み』日本キリスト兄弟団、1991年。
  • 東條隆進『日本宣教における「地方」の問題―日本キリスト兄弟団の歩みを通して―』関西ミッション・リサーチ・センター、東京ミッション研究所、1999年。


再洗礼派・宗教改革少数派を扱った文学

  • マイロン・アウグスバーガー著、榊原巌訳『燃える巡礼 ミハエル・ザットラー伝』平凡社、1979年。(『シュライトハイム信仰告白』を起草したミヒャエル・ザトラーの生涯を描いた小説。)
  • バーバラ・スマッカー著、田中治美訳『クマさんのキルトはセリーナのたからもの』ぬぷん児童図書出版、1997年。(南北戦争の最中、ペンシルバニアからカナダへ亡命した少女セリーナとおばあさまの絆を描いた絵本。)
  • バーバラ・スマッカー著、田中治美訳『勇気は私たちの祖国』ぬぷん、1999年。(ウクライナのメノー派一家がロシア革命後カナダへ移住するまでを描いた児童文学。)
  • ルーサー・ブリセット著、さとうななこ訳『Q 上』東京創元社、2014年。
  • ルーサー・ブリセット著、さとうななこ訳『Q 下』東京創元社、2014年。(宗教改革後のヨーロッパを股に掛けた、革命を起こそうとする無名の男とそれを阻止しようとするQの戦いを描いた小説。農民戦争とミュンスター再洗礼派が登場。)

編著書『旅する教会 再洗礼派と宗教改革』が出版されます


私が他の方々といっしょに編集・執筆した『旅する教会 再洗礼派と宗教改革』という本が1月25日に新教出版社から出版されます。この本は、再洗礼派の歴史をその誕生から現代までたどったものです。一冊で約500年の再洗礼派の歴史を駆け抜ける、疾走感あふれる一冊になっています。


この本は三部構成になっています。第1部「再洗礼派の誕生と受難」は、16世紀に宗教改革が始まった後、再洗礼派が誕生し広まっていった初期の段階を追いかけます。

チューリヒで最初に信仰洗礼を行われてから、再洗礼主義はドイツ、オーストリア、低地地方など他のヨーロッパ地域でも見られるようになり、心霊主義や終末論と結びつくなど多様な運動となりました。そうした中、公権力と結びついた教会形成を目指したバルタザル・フープマイアー、終末の間近な到来と背神者たちに対する武装蜂起を構想したハンス・フートやミュンスター再洗礼派の試みは潰え、非暴力・無抵抗の立場をとるスイス再洗礼派、フッター派、メノー派が生き残ることになる過程が描かれます。

第2部「再洗礼派の諸相」では、再洗礼派の歴史の大きな流れを概観しただけではこぼれ落ちてしまう様々な側面を描き出します。

そこでは、中世後期の宗教運動と再洗礼派の関係、ミュンスター事件に見られるメディアの中の再洗礼派像、都市ケルンを中心とした再洗礼派のネットワーク、イタリアのラディカルたち、再洗礼派とジェネラル・バプテストの出会い、再洗礼派の賛美歌集『アウスブント』、殉教者列伝『殉教者の鑑』に光を当てます。

第3部「近代化する社会を生きる再洗礼派」では、再洗礼派内での主要な宗派が確立された17世紀から現代までの彼らの歴史を追いかけます。

ヨーロッパ社会が近世から近代に移行するこの時代に、再洗礼派を取り巻く状況は変化し、彼らの多くは最終的に故郷ヨーロッパを離れ新大陸に渡ることになりました。そして北米で地歩を築いた再洗礼派は、全世界で宣教し信徒を広げていきました。その過程で、国民国家の成立や社会の近代化、社会やキリスト教グローバル化という大きな変化に、再洗礼派がどのように対応していったかが明らかにされます。

詳しい目次は、以下をご覧下さい。


永本哲也、猪刈由紀、早川朝子、山本大丙編『旅する教会 再洗礼派と宗教改革新教出版社、2017年

 プロローグ
第1部 再洗礼派の誕生と受難
 1 偽りの教えを説く悪魔−ルターの宗教改革と再洗礼派
 2 ルターから逸脱する改革者たち−カールシュタット、ミュンツァー、再洗礼派
 3 ツヴィングリの先を行く−スイス再洗礼派
 4 1528年の聖霊降臨祭に世界は終末を迎える−南ドイツでの展開
 5 財産のいっさいを共同体に供出する−モラヴィアのフッター派
 6 地上に降り立った新しきエルサレム−1530-35年の北西ヨーロッパ・ミュンスター再洗礼派
 7 信仰の徹底を目指して−心霊主義とメノー派の形成
 8 忌避と破門をめぐる戦い−メノー派の分裂・統合の試み・アーミシュの出現
 9 自覚的信仰と予定−ジャン・カルヴァンと改革派の再洗礼派観

第2部 再洗礼派の諸相
 1 「使徒的生活」を目指す改革者たち−中世後期の宗教運動と再洗礼派
 2 メディアのなかの再洗礼派−ミュンスターの再洗礼派王国驚異譚
 3 緩やかに根づくネットワーク−再洗礼派と都市
 4 イタリアのラディカルたち−カトリックの牙城での宗教改革
 5 信仰者のバプテスマのみを認める−再洗礼派とバプテストの出会い
 6 『アウスブント』−殉教者たちの記憶
 7 『殉教者の鑑』−メノー派・アーミシュのアイデンティティの源泉

第3部 近代化する社会を生きる再洗礼派
 1 「宗派化」の時代を生き抜く宗教的少数派−16〜17世紀の「スイス兄弟団」
 2 「忌避」に同意しない者は破門する−アーミシュの誕生
 3 近世から近代を生き抜くメノー派−プロイセン、ドイツ、ロシア
 4 フッター派の500年−財産共有と無抵抗主義を守りぬく
 5 真の信仰は決して強制され得ない−シュヴェンクフェルト派の形成
 6 自由な社会の市民として生きる−アメリカ、カナダの再洗礼派
 7 伝統の保持、「世界」への適応−アーミシュの教育
 8 世界に広がる再洗礼派−アジア、アフリカ、ラテンアメリカへの宣教
 9 戦後に生まれた再洗礼派教会−日本のメノナイトとフッタライト

 エピローグ−再洗礼派と宗教改革の500年
 再洗礼派関連略年表


新教出版社のサイトでも、この本の概要を見ることができます。
http://www.shinkyo-pb.com/2016/12/21/post-1267.php

Amazon では、現在予約受付中です。よろしくお願いします。
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN//4400227251/saisenreiha-22