ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

アンゲラ・メルケルがやって来た

もうすぐミュンスターの属するノルトライン・ヴェストファーレン州の選挙があるということで、ドイツ最大野党CDU の党首アンゲラ・メルケルが、ミュンスターにやって来ました。

アンゲラ・メルケルと言えば、シュレーダーとドイツの次期首相を争う超大物政治家です。私は外国人なので、選挙は関係ないのですが、テレビで顔を良く見る超有名人が来るということで、ミーハー心を出して、彼女の演説を見に行きました。

彼女の演説は、夜の7時半から街の中心部にある大聖堂広場で行われました。私は彼女のような有名人がやってくるのだから、広場は人で一杯になるのではないかと思っていたのですが、実際には、広場の半分くらいが埋まっただけでした。とは言っても、軽く数千人は集まっているのだから、十分集客力があるのですが。

彼女の演説自体は30分ほどの短いもので、大学の学費導入、社会保険の改革、失業対策などについてコンパクトに言及するものでした。彼女の政策は、新自由主義寄りで、社会保障の自己負担比率の増加、労働市場のフレキシビリティーの増進、規制の撤廃などを主張していました。

しかし、私にとって面白かったのは、彼女の演説そのものというよりは、聴衆の方です。広場を埋めた聴衆は、大きく分けて二つのグループに分けられると思います。一つは、CDU 支持者。彼らの多くはご老人で、舞台の前の方に陣取り、メルケルが演説するたび拍手をしていました。

もう一つは、学生達です。広場にいた聴衆の半分以上は、おそらく大学生で、その大半は反CDU、反アンゲラ・メルケルでした。大学生というのは全般的にリベラル寄りなものですし、CDU は大学の授業料導入を主張しているので、彼女に対して批判的なのでしょう。彼らは、メルケルが持論を展開するたびに、大きな声でブーイングを飛ばしたり、シュプレヒコールをしたり、指笛を吹いて、彼女の演説を邪魔しようとしていました。

そのため、広場はスピーカーから流れるメルケルの演説と、支持者の拍手、そして学生のブーイングが混じり合う、騒然とした雰囲気に包まれていました。当然警察官も多数動員され、辺りを警戒していました。

私は日本では、閑散としていたり、支持者だけの内輪な雰囲気の街頭演説しか聞いたことがなかったので、この熱気溢れる会場の雰囲気には、驚かされました。

アンゲラ・メルケルも、学生たちのブーイングを山ほど浴びながら、毅然とした態度で熱っぽく語り続け、投票を呼びかけていました。彼女は、色々な政策を短くまとめ、分かりやすく語っていましたし、話し方もメリハリがあるということで、やはりこちらの政治家は演説に長けていると感じました。

演説が終わった後、パンクスみたいな格好をした若者とCDU 支持者と見られるおじいさんが熱っぽく議論していたのも印象的でした。若者と老人の議論というのは、わりとあちこちで見られたので、こちらでは見知らぬ者同士がいきなり議論を始めると言うことも、結構あるのだろうと思いました。

広場には、ビールなどを売る売店も出て、その前で人々が飲み物を飲んでいるなど、ちょっとしたお祭りのような雰囲気でした。ドイツ人は、日頃は物静かでも、サッカーと政治に関しては非常に熱いようです。