ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

人間だけが言語をもっていることの不思議

蒼龍のタワゴト」さんで紹介されていた岡ノ谷一夫さんのジュウシマツの歌文法の研究を紹介する記事を読みました。

 では、どうして彼らは複雑な歌を歌うのか。小鳥が歌うのは求愛と縄張り防衛のためだが、どうもメスは複雑な歌を歌うオスを好むらしいのである。ということは、複雑な歌文法を編み出したオスほど、子孫を残せる確率が高くなる(これを性淘汰という)。そして、野鳥ではないジュウシマツは天敵に捕食される心配がないので、たっぷり練習して長く複雑な歌を歌うことができる。つまり、人間はジュウシマツの原種を家禽にしたことで、彼らの歌文法の進化に手を貸してきた、ということらしいのだ。
 現在、岡ノ谷さんはたくさんのジュウシマツを飼育しながら、以上のような説を精緻に裏付けるための研究を続けている。そして、それは「ヒトはどうやって言語を獲得したか」を考える研究でもある。というのも、ヒトの言葉も、ジュウシマツの歌と同様に、文法が意味とは無関係に性淘汰で進化したのではないか。それがのちに意味と結合することで言語が生まれたのではないか、という理論を打ち立てようとしているからだ。

Part1: 小鳥の歌がヒントをくれた人間の言語の起源の謎

 泣き声研究は別の重要なテーマとも関連している。前ページで紹介した文法と意味の独立進化説を採用した場合、いったい文法と意味はどうやって結合するのか? という問題だ。これに対しては、岡ノ谷さんは「相互分節化仮説」を唱えている。
 「テナガザルという歌う類人猿がいますが、彼らは何種類もの歌を状況に応じて歌い分けているんです。我々の祖先も歌う霊長類だったのではないでしょうか。歌は長い音列で構成されています。状況と歌の音列が相互に分節化することで限定された意味を持つ単語が生まれてきたのではないかと考えています」。私たちの先祖が、ある状況?でAという歌を歌い、他の状況?でBという歌を歌っていたとする。このとき、?と?に共通点があれば、AとBの中にある音列の共通部分が、その状況の共通点に対応するフレーズとして認識されるようになる(図3)-これが相互分節化だ。最初に単語があってそれが組み合わさって文章ができたのではなく、はじめは状況と漠然と対応した長い歌があって、それがどんどん分節化されていって単語の列になっていった、というわけだ。

Part2: 人間進化の謎に迫る壮大な仮説を小動物や赤ちゃんから検証


まとめとしては、こうなります。

 鳥の歌研究を端緒に、「歌と文法が性淘汰で進化し、それが音列と状況の相互分節化によって言語になる」という言語創発のストーリーが作られた。