ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

日本語の再洗礼派・宗教改革少数派文献リスト

少し前に、共編著『旅する教会 再洗礼派と宗教改革』を出版しました。この本は、16世紀から現代にかけての再洗礼派の歴史を概観したものです。

この本には、各章に註のかたちで参考文献がつけてありますが、基本的に、各著者が自分が直接参考にした文献を紹介しているので、各テーマに関する重要な文献を網羅的に挙げているわけではありません。また、紙幅の都合もあり、この本には詳細な文献案内をつけませんでした。

そのため、再洗礼派に関心があり、もっと色々調べてみたいという方のために、日本語で読める再洗礼派関連の文献リストを作ってみました。まだまだ網羅的なリストになっていませんが、これから暇を見て随時追加していこうと思います。

1990年代半ばまでのミュンツァー、カールシュタット、農民戦争、再洗礼派に関する文献については、『宗教改革著作集15 教会規定・年表・地図・参考文献目録』1998年、210-222頁にまとめられているので、こちらも是非ご参照下さい。

日本メノナイト教会協議会のサイトの「アナバプテスト関連図書」にも、多くの再洗礼派関連の本が紹介されています。
http://www.mennonite.jp/resources/%e3%82%a2%e3%83%8a%e3%83%90%e3%83%97%e3%83%86%e3%82%b9%e3%83%88%e9%96%a2%e9%80%a3%e5%9b%b3%e6%9b%b8/


研究史整理

  • 倉塚平「序説 ラディカル・リフォーメーション研究史」倉塚平、田中真造他編訳『宗教改革急進派 ラディカル・リフォメーションの思想と行動』ヨルダン社、1972年、5-61頁。
  • 踊共二「再洗礼派運動と農民戦争」『史潮』新23号、1988年、89-101頁。
  • 踊共二「宗教改革急進派−その起源と宗派化の諸相」森田安一編『ヨーロッパ宗教改革の連携と断絶』教文館、2009年、41-54頁。
  • 出村彰「解説」出村彰、森田安一、倉塚平、矢口以文訳『宗教改革著作集 第8巻再洗礼派』教文館、1992年、493-510頁。


再洗礼派全般

  • 倉塚平『異端と殉教』筑摩書房、1972年。
  • 倉塚平、田中真造他編訳『宗教改革急進派 ラディカル・リフォメーションの思想と行動』ヨルダン社、1972年。
  • 倉塚平「再洗礼派の二王国論とその現実形態(上)」『思想』603、1974年9月、74-92頁。
  • 倉塚平「再洗礼派の二王国論とその現実形態(下)」『思想』607、1975年1月、12-36頁。
  • 坂井信生『聖なる共同体の人々』九州大学出版会、2007年。(現代のアーミシュ、フッター派、メノー派を扱った研究。)
  • 榊原巌『アナバプティスト派古典時代の歴史的研究』平凡社、1972年。
  • 出村彰『再洗礼派 宗教改革時代のラディカリストたち』日本基督教団出版局、1970年。
  • 出村彰、森田安一、倉塚平、矢口以文訳『宗教改革著作集 第8巻再洗礼派』教文館、1992年。
  • 中村賢二郎「宗教改革と急進的宗教改革派」同『宗教改革と国家』ミネルヴァ書房、1976年、167-244頁。(スイス再洗礼派、フート、南ドイツ再洗礼派の終末観、スイス兄弟団、フッター派、ハンス・レーマー、フートの世俗に対する態度と社会層を扱っている。)
  • 永本哲也、猪刈由紀、早川朝子、山本大丙編『旅する教会 再洗礼派と宗教改革新教出版社、2017年。(16世紀から現代までの再洗礼派の歴史の概説。)
  • 深井智朗『プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで』中公新書、2017年。(再洗礼派やバプテスト等「洗礼主義」を「新プロテスタント」と捉え、リベラリズムの源流だとする。)


史料


再洗礼派の思想

  • W. クラーセン著、野村竹二訳『もう一つの宗教改革−アナバプテストの生きた道−』シャローム出版、1992年。
  • アーノルド・スナイダー著、中川美弥子、矢口以文訳、東條隆進監修『イエスの足跡に従う−アナバプテストの伝統−』東京ミッション研究所、2013年。(再洗礼派の霊性を扱った著作。)
  • ロバート・フリードマン著、榊原巌訳『アナバプティズムの神学』平凡社、1975年。


アンドレアス・ボーデンシュタイン・カールシュタット

  • 小田部進一「初期宗教改革における新しい信徒像 : アンドレアス・ボーデンシュタイン・フォン・カールシュタットの木版画ビラ『馬車』(1519年)を手がかりにして」『神学研究』52、2005年、115-128頁。
  • 小田部進一「カールシュタットにおける改革運動の神学的契機―『聖画像の撤去について』(1525年)を手がかりにして―」『キリスト教史学』62、2008年7月、90-119頁。
  • 倉松功『ルター、ミュンツァー、カールシュタット《その生涯と神学思想の比較》』聖文舎、1973年、1981年改訂3版。
  • 田中真造、松山與志雄、倉松功、宮庄哲夫、前間良爾訳『宗教改革著作集7 ミュンツァー、カールシュタット、農民戦争』教文舘、1985年。


トーマス・ミュンツァー


スイス再洗礼派

  • 踊共二「スイス再洗礼派と農民戦争」『歴史学研究』587、1988年、56-66頁。
  • 踊共二「再洗礼派運動と農民戦争―ミヒャエル・ザトラーの場合―」『歴史学研究』626、1991年、87-96頁。
  • 榊原巌『コンラット・グレーベル伝』平凡社、1982年。(スイス再洗礼派の最初期の指導者グレーベルの伝記。)
  • 森田安一「チューリッヒにおける再洗礼派運動について―ツヴィングリ主義による宗教改革の一側面」『史学雑誌』76-11、1967年、1-40頁。
  • 森田安一「スイス人文主義の一側面―ツヴィングリ、ヴァディアン、グレーベル―」『日本女子大学紀要 文学部』55、2005年、43-60頁。


バルタザル・フープマイアー


南ドイツ再洗礼派


フッター派

  • 坂井信生『聖なる共同体の人々』九州大学出版会、2007年、87-149頁。(現代の北米や日本のフッター派を扱った研究。)
  • 榊原巌『殉教と亡命 フッタライトの450年』平凡社、1967年。(フッター派の歴史を概観した研究。)
  • 滝口克典「16世紀後半におけるフッター派の「良き秩序」構想」『山形大学歴史・地理・人類学論集』創刊号、2000年、1-32頁。
  • ペーター・リーデマン著、榊原巌訳『フッタライト派信仰告白平凡社、1977年。(初期のフッター派指導者リーデマンによる信仰告白の翻訳。)
  • 小坂幸三『アーミシュとフッタライト 近代化への対応と生き残り戦略』明石書店、2017年。


心霊主義

  • 金子晴勇『ルターの霊性思想』教文館、2009年、271-187頁。(ルターとミュンツァー、フランク、シュヴェンクフェルトといった心霊主義者の思想を扱った小論考。)


カスパー・シュヴェンクフェルト

  • 山本大丙「真の信仰は決して強制され得ない シュヴェンクフェルト派の形成」永本哲也、猪刈由紀、早川朝子、山本大丙編『旅する教会 再洗礼派と宗教改革新教出版社、2017年、210-217頁。
  • 木塚隆志「C. シュヴェンクフェルトにおける黙示録的歴史解釈」木塚隆志トーマス・ミュンツァーと黙示録的終末観』未來社、2001年、155-178頁。


セバスティアン・フランク


ミュンスター再洗礼派


下ライン地方再洗礼派

  • 永本哲也「 1534年2月下ライン地方における宗教改革思想・再洗礼主義の伝播 〜ヤコブ・フォン・オッセンブルクによるミュンスター再洗礼派の宣教分析を通じて〜」『エクフラシス』3、2013年、161-177頁。(ミュンスターでの再洗礼派統治開始直後の下ライン地方での宣教を扱った研究。)


低地地方再洗礼派

  • 倉塚平「ミュンスター再洗礼派王国論(1)」『政経論叢』明治大学政治経済研究所紀要56巻5/6号、1988年、1-119頁。
  • 栗原健「獄中書簡に見るネーデルラント再洗礼派女性の信仰」『日蘭学会会誌』26-1 (通巻48巻)、2001年10月、1-15頁。
  • 栗原健「ネーデルラント再洗礼派信徒の獄中書簡―その信憑性と史料価値―」『日蘭学会会誌』29-1 (通巻52巻)、2004年10月、105-108頁。
  • 松田洋子「16世紀ネーデルラントにおける宗教政策の一側面―フロニンゲン州の再洗礼派対策を中心に―」『日蘭学会会誌』11-2 (通巻22号)、1987年、43-59頁。
  • 山本大丙「近世オランダ共和国のメノー派商人」『創文』514、2008年11月、19-22頁。


メノー・シモンズ

  • 村上みか「メノ・シモンズにおける「国家と教会」−宗教改革期における政教分離思想の萌芽−」『人文学と神学』8、2015年、1-15頁。(メノーの国家と教会の理解が近代的な政教分離に通じる要素を含んでいると指摘した論文)


ミカエル・セルヴェトゥス


ユダヤ

  • 森田安一「近世ドイツ語圏に見られるトルコ人ユダヤ人観―ルターを中心に― 」深沢克己編『ユーラシア諸宗教の関係史論 他者の受容、他者の排除』勉誠出版、2010年、261-280頁。


トルコ人


プロイセン再洗礼派

  • 石坂昭雄「ヴェストプロイセンにおけるネーデルラント系メンノー派コロニーの形成とその経済活動(1525-1772)-1-」『経済学研究』34(4)、1985年、33-53頁。
  • 石坂昭雄「ヴェストプロイセンにおけるネーデルラント系メンノー派コロニーの形成とその経済活動(1525-1772)-2-」『経済学研究』35(1)、1985年、17-33頁。
  • 石坂昭雄「ヴェストプロイセンにおけるネーデルラント系メンノー派コロニーの形成とその経済活動(1525-1772)-3-」『経済学研究』35(2)、1985年、28-57頁。


アーミシュ

  • 踊共二「アーミシュの起源 : 寛容思想史の視点から」『武蔵大学人文学会』2012年度・第44巻 第1・2号、91-115頁。
  • 坂井信生『アーミシュ研究』教文館、1977年。(アーミシュの歴史や特性を扱った重要な研究書。)
  • 坂井信生『聖なる共同体の人々』九州大学出版会、2007年、87-149頁。(現代の北米のアーミシュを扱った研究。)
  • リチャード・T.シェーファー、ウィリアム・W.ゼルナー著 、徳永真紀,、松野亜希子訳『脱文明のユートピアを求めて』筑摩書房、2015年、80-142頁。(社会学者による北米のオールド・オーダー・アーミシュの概説。)
  • 関哲行、踊共二『忘れられたマイノリティ 迫害と共生のヨーロッパ史山川出版社、2016年。
  • 大河原眞美『アメリカ史のなかのアーミッシュ 成立の起源から「社会的忌避」をめぐる分裂・分立の歴史まで』明石書店、2018年。
  • 小坂幸三『アーミシュとフッタライト 近代化への対応と生き残り戦略』明石書店、2017年。


ブレザレン教会

  • ハンス・シュナイダー著、芝田豊彦訳『ドイツにおけるラディカルな敬虔主義』関西大学出版部、2013年。


北米メノー派

  • 鈴木七美「キリスト教非暴力と平和主義の底流 再洗礼派メノナイト/アーミシュ」綾部恒雄監修・編『結社の世界史5 クラブが創った国アメリカ』山川出版社、2005年、84-96頁。


ラテンアメリカ再洗礼派

  • 国本伊代「メキシコにおけるメノナイト信徒集団―キリスト教プロテスタント再洗礼派のメキシコ移住の経緯と現状」『中央大学論集』19、1998年3月、31-47頁。
  • 国本伊代「ボリビアにおけるメノナイト信徒集団―キリスト教プロテスタント再洗礼派が辿り着いた最後の新天地―」『中央大学論集』20、1999年5月、93-105頁。
  • 国本伊代「パラグアイにおけるメノナイト信徒集団―キリスト教プロテスタント再洗礼派に変貌を強いた歴史的背景と現状―」『中央大学論集』22、2001年3月、45-60頁。
  • 国本伊代「ベリーズにおけるメノナイト信徒集団―キリスト教再洗礼派が熱帯低地に求めた新天地の建設と変貌―」『中央大学論集』24、2003年3月、55-71頁。
  • 国本伊代「アルゼンチンにおけるメノナイト信徒集団―キリスト教再洗礼派の探した新天地ラパンパ州ヌエバエスペランサ・コロニーが経験した国家との対決―」『中央大学論集』25、2004年3月、75-91頁。
  • 国本伊代「ブラジルのメノナイト―南部パラナ州におけるロシア難民メノナイトの定住過程―」『中央大学論集』29、2008年2月、25-45頁。
  • 坂井信生『聖なる共同体の人々』九州大学出版会、2007年、87-149頁。(現代のメキシコのメノー派を扱った研究。)


日本の再洗礼派

  • ドイル・ブック著、岡崎寛人訳『敷居が高い 日本におけるキリスト兄弟団の歩み』日本キリスト兄弟団、1991年。
  • 東條隆進『日本宣教における「地方」の問題―日本キリスト兄弟団の歩みを通して―』関西ミッション・リサーチ・センター、東京ミッション研究所、1999年。


再洗礼派・宗教改革少数派を扱った文学

  • マイロン・アウグスバーガー著、榊原巌訳『燃える巡礼 ミハエル・ザットラー伝』平凡社、1979年。(『シュライトハイム信仰告白』を起草したミヒャエル・ザトラーの生涯を描いた小説。)
  • バーバラ・スマッカー著、田中治美訳『クマさんのキルトはセリーナのたからもの』ぬぷん児童図書出版、1997年。(南北戦争の最中、ペンシルバニアからカナダへ亡命した少女セリーナとおばあさまの絆を描いた絵本。)
  • バーバラ・スマッカー著、田中治美訳『勇気は私たちの祖国』ぬぷん、1999年。(ウクライナのメノー派一家がロシア革命後カナダへ移住するまでを描いた児童文学。)
  • ルーサー・ブリセット著、さとうななこ訳『Q 上』東京創元社、2014年。
  • ルーサー・ブリセット著、さとうななこ訳『Q 下』東京創元社、2014年。(宗教改革後のヨーロッパを股に掛けた、革命を起こそうとする無名の男とそれを阻止しようとするQの戦いを描いた小説。農民戦争とミュンスター再洗礼派が登場。)