ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

テオ・ファン・ゴッホの「Submission」はインターネットでだけ見れます。

オランダの映画監督Theo van Gogh テオ・ファン・ゴッホ氏が、イスラムを批判するような「Submission」という短編映画を作ったと言うことで殺されてしまいました。その後オランダでは、その報復と見られるイスラム教徒への攻撃が生じ、きな臭い雰囲気になっています。

ヨーロッパはどこも景気が悪いせいか、外国人に対し余り友好的でない方に動いているような気がしていて嫌なのですが(ドイツでも失業問題で不満爆発の旧東ドイツでは、地方議会に極右政党が議席を持っています)、これまでリベラルかと思っていたオランダでもこんなことになり嫌な感じです。テロ警戒のため、ただでさえドイツ国内でも列車の中で私服警官に質問され、身分証明書を提示させられたりと、私も嫌な思いをしているので、これ以上何も起こらないでほしいものです。

さて、Bild を眺めていたら、Spiegel TV (雑誌Spiegel のやってるドキュメンタリー番組)は、RTL という放送局でゴッホのこの映画を放映しようとしたが、オランダの製作会社から禁止され、放映が出来なくなったとのことです。

http://www.bild.t-online.de/BTO/news/2004/11/16/gogh/gogh__film.html

広報の女性が言うには、「火に油を注ぎたくない」とのことですが、確かに今の時期は、余り対立を刺激するようなことはしない方が良いかも知れません。

しかし、テレビで放映されなくても、現在でも彼の問題の映画は、ネット上で見ることが出来ます。

http://www.ifilm.com/ifilmdetail/2655656

また、週刊誌の方のSpiegel も、ゴッホの事件を意識したのか知りませんが、「Allahs rechtlose Töchter - Muslimische Frauen in Deutschland 」(アラーの無権利の娘たち−ドイツのイスラム女性)というタイトルで、イスラム女性が暴力を含む家父長権的抑圧を受けて苦しんでいるというような特集を組んでいました。詳しい内容は、本屋でペラペラめくっただけなので分かりませんが、微妙な時期に微妙な特集を組んだものだと思いました。

ヨーロッパは、EU へのトルコ加入問題という、これまた微妙な問題を抱えていますし、移民や難民受け入れを厳しくする方向に動いているみたいですし、外国人からすると、微妙だなと思ってしまいます。ミュンスターでも、外国人局は、役所の正面からじゃなく、横から入らなければならないですし、何とも微妙だなと思います。

でも、このままあらゆる面でグローバル化が進めば、人のグローバル化も避け得ないわけで、中長期的に考えた場合、違った文化の者同士でも、折り合いを付けて生きていく技術や耐性を、気を長く持って発展させる以外、選択肢はないと思うのですが。今回のようなことは今後も数限りなく起こるのでしょうが、「時にはもめごとも起きるわな」ぐらいの心持ちで、突出した出来事で頭に血を上らせることなく、ゆっくりとでもそちらの方に歩いていけば、半世紀も経てば、大分違うと思うのですが。