ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

日本は既に貧富の差が激しく、日本政府は既に小さな政府であると言うこと。

90年代に入る前は、日本は世界でも有数の平等な社会だと言われていましたが、80年代から次第に富裕層と貧困層の格差が開き始めたことは、すでに良く知られていることだと思います。*1

今回の選挙の結果を受け、今後の国内での再分配や今後の階層間の格差の拡大について、色々と議論されているように見えます。

そんな中、2005年2月公表の「OECD ワーキング・レポート22」の結果について紹介していた記事連合総合生活開発研究所のサイトにあったので、まとめのまとめになってしまいますが、ご紹介してみます。*2SocioLogic(lovelesszero 5.0) 経由)

  • 等価可処分所得(所帯可処分所得を世帯人数の平方根で除して各世帯員に割付たもの)によるジニ係数を見ると、日本(31.4%)はメキシコ(46.7%)、トルコ(43.9%)、次いで米国(35.7%)、イタリー(34.7%)、ニュージーランド(33.7%)、英国(32.6%)などの高位グループに入る。
  • 上から10%と下から10%の所得格差に関しては、日本は4.9倍で、メキシコ(9.3 倍)、トルコ(6・5 倍)、米国(5.4 倍)、ポルトガル(5.0 倍)に続く第5位になっている。24カ国平均は、4.2倍。
  • 日本の貧困率は人口比で15.3%で、メキシコ(20.3%)、米国(17.1%)、トルコ(15.9%)、アイルランド(15.4%)に次いで5位。24各国平均は、10.4%。
  • 日本は、税・社会保障給付を含めない市場所得のみによる貧困率については、フランス,ドイツ、ベルギー、デンマーク、イギリス、アメリカなど主要な欧米諸国よりは低いものの、税・社会保障給付を含めた可処分所得貧困率は、アメリカを除いた他の諸国を大きく上回る。つまり、日本の貧困の原因は、政府の再分配政策が弱いことにある。
  • 生産人口における貧困層においても日本は2人働き世帯所属の貧困者がその4割弱、1人働き世帯所属の者が3割強を占め、無業者は1割強である。他の諸国では、働いている世帯の貧困者の比率は大幅に小さく、無業者が中心になっている。つまり、日本では、他の国と違って、非正規労働者の賃金が非常に低いために、働いていても、貧困状態に陥ることが多い。

上記のまとめから、日本はすでにOECD 諸国の中でも、貧富の差が激しい国に属すること、その理由は、政府が再分配を余り行わないこと、そして非正規労働の賃金が低すぎることにあることが分かります。

現在、日本の政府は「小さな政府」を実現させようと努力をしているところですが、元々日本の政府は、ヨーロッパ諸国と比べると小さかったと言えます。*3現在でも再分配が弱いと指摘されている現状で、より政府支出を削り、再分配の効果が弱まるならば、より貧困層が増えることが予想されると思うのですが、どうなのでしょうか。

また、現在日本では、急激に正社員が減らされ、非正規労働に置き換えられています。日本の非正規労働者の賃金が著しく低いために、労働に従事していても貧困者になってしまうと指摘されている現在、政府が、非正規労働者の増加を止める手だてを講ずる、あるいは非正規労働者の賃金の大幅な向上を促すための措置を取らない限り、今後も貧困層は増加するのではないかと思うのですが、どうなのでしょうか。

現在日本では、正規労働者と非正規労働者、都市と地方の格差が、今後急速に開くのではないかと言われていますが、その場合、国内での利害対立をどのように処理するのかが問題になるのではないかと思います。この間のアメリカの大統領選でも、都市と地方の投票傾向の違いが指摘されていたと記憶していますが、日本でも、今後同様のことが起こりうるのではないでしょうか。

アメリカは、国内の階層、あるいは人種間の格差を、強力なナショナリズムと自由や民主主義のような理念で一つにまとめているという話は、あちこちで聞くような気がしますが、今後日本で、階層間、あるいは都市部と地方の格差が開いてきた場合、国をまとめる原理として、ナショナリズムを強化する方向へ進むのでしょうか。

私としては、階層間格差によって生じる問題を、ナショナリズムの強化と監視や警察権の強化で解決するのではなく、階層間格差を緩和することで解決して欲しいと思っていますし、そのために政府も様々な改革を行い、経済を浮揚させようと努力をしているのだと信じたいと思っていますが、果たして今後どうなるのでしょうか。

今後経済格差が解消されず、ますます広がった場合、ある国家の国民であるより先に、プロレタリアートだという意識を持つような人が増えて来て、万国の労働者の団結が叫ばれるというのも、あながち冗談ではなくなるかもしれない思わないことはないです。個人的には、階級闘争の再来よりは、再分配政策の強化、非正規労働者保護のための法改正、景気の回復による労働市場の改善により、経済格差が縮小に向かうシナリオを支持したいところですが、どうなるのでしょうか。

*1:たとえば、橘木俊詔『日本の経済格差―所得と資産から考える―』1998年岩波新書

*2:元のOECD のレポートを読まないで、他の方のまとめをそのまま拝借したのは、誉められたことではありませんが、元の文章に当たって、まとめ記事、あるいはOECD レポートの妥当性を検討するのは時間的、労力的に無理なので、ご容赦下さい。

*3:http://cloudy9.fc2web.com/govsize.html を参照のこと。