ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

歴史学者にとって一番怖いこと

今日も快晴で、なおかつ凄く寒いです。あたり一面、霜と氷だらけ。でも、空は真っ青、太陽の光が燦々としており爽快です。でも、図書館は試験シーズンなので、もの凄い混雑です。

Ralf Klötzer氏の再洗礼派指導者の審問記録の再検討を扱った論考*1を読み終わりました。何でも、既刊の史料集の書き起こしには、相当沢山の間違いが含まれていたそうです。ということは、その史料集の他の手紙や審問記録の書き起こしにも、多くの間違いが含まれていると言うことです。ああ、眩暈が・・・・。

でも、世に出ている膨大の史料集の中には、まだ気づかれていない重大な間違いが、沢山あるはずなんですよね。私も、手書き文書を実際に何度も見て分かりましたが、書記が適当に書き飛ばしたところは、とても正確に全てのアルファベットを判別できないだろうと思います。少なからず文脈で推測しなければならないところもあるのでしょうから、書き起こし間違いが生じるのは仕方がないとも言えます。

しかし、刊行史料の書き起こし間違いに気づかず(オリジナルを見なければ気づくわけがありませんが)、その部分を中心的論拠として使った論文は、その時点で論拠崩壊です。かと言って、刊行史料を疑いだしたらキリがないので、信用して使わざるを得ません。良く考えてみると、ずいぶん怖いなと思います。

*1:Klötzer, Ralf, Die Verhöre der Täuferführer von Münster vom 25. Juli 1535 auf Jaus Dülmen. Zwei Versionen im Vergleich, in: Mennonitische Geschichtsblätter 59, 2002, S. 145-172.