受容理論
それがここでとりあげられている治癒の指輪ですが、王権が民間信仰を国王儀礼のなかに取り込んでいく、また逆に王の儀礼が民間信仰のレベルで受け止められていく、その過程にブロックは注目したのです。王権がどんな理屈を持ち出しても、それだけでは現実の力とはならない。いかなる理論、いかなる制度も、民衆の集合表象と重なり合い受容されてはじめて機能しうるというわけです。このような見方は、今日の文学理論ではローベルト・ヤウスらによって提唱されている「受容の美学」と相通じるもので、原著新版に序文を寄せたルゴフもこの点にふれてブロックの先進性を指摘しています。
二宮宏之『マルク・ブロックを読む (岩波セミナーブックス)』、103-104頁