ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

移動する女性

前近代社会にも、移動する人々が溢れていたことは、L. フェーブルが指摘したとおりです。(参考

Peter Ketsch によれば、都市の租税記録に、独り身の女性が継続的に出てくることは稀であり、多くの女性は食い扶持を探すためにその街を去ったり、未亡人の場合亡くなったりしたとのことです。

Ketsch, Peter, Frauen im Mittelalter. Bd. 1. Frauenarbeit im Mittelalter. Quellen und Materialien, Düsseldolf 1983, S. 48.

当時の都市下層民は、男女問わず、日払いや短期の雇用で賃労働を行い糊口を凌いでいたはずなので、仕事がなくなれば、余所の街に行ったのでしょう。(参考

ティル・オイレンシュピーゲルやトマス・プラッターたちが頻繁に移動をしているのを見ても、中近世社会においても、定住者だけではなく、移動する人々を考慮に入れないと、当時の社会の実相は見てこないだろうと思います。