移動する女性
前近代社会にも、移動する人々が溢れていたことは、L. フェーブルが指摘したとおりです。(参考)
Peter Ketsch によれば、都市の租税記録に、独り身の女性が継続的に出てくることは稀であり、多くの女性は食い扶持を探すためにその街を去ったり、未亡人の場合亡くなったりしたとのことです。
Ketsch, Peter, Frauen im Mittelalter. Bd. 1. Frauenarbeit im Mittelalter. Quellen und Materialien, Düsseldolf 1983, S. 48.
当時の都市下層民は、男女問わず、日払いや短期の雇用で賃労働を行い糊口を凌いでいたはずなので、仕事がなくなれば、余所の街に行ったのでしょう。(参考)
ティル・オイレンシュピーゲルやトマス・プラッターたちが頻繁に移動をしているのを見ても、中近世社会においても、定住者だけではなく、移動する人々を考慮に入れないと、当時の社会の実相は見てこないだろうと思います。