公開シンポジウム「宗教改革の伝播とトランス・ナショナルな衝撃―宗教改革500周年にむけて」
しばらく前だが、6月20日に立教大学で開かれた「宗教改革の伝播とトランス・ナショナルな衝撃―宗教改革500周年にむけて」というシンポジウムに行ってきた。このシンポジウムは、ケネス・G・アッポルド 氏(プリンストン神学大学 ジェームス・ヘイスティングス・ニコールズ宗教改革史教授)と日本の研究者が、多様な観点から宗教改革に迫るというものだった。
http://www.rikkyo.ac.jp/events/2015/06/16186/
アッポルド氏の著作『宗教改革小史』は、日本語での翻訳もある。
アッポルド氏の報告は、“Reformation Studies on the Eve of the Quincentennial”(「宗教改革研究の動向について:500周年を目前に」)というタイトルで、宗教改革をグローバルな観点から見ようという野心的なものだった。
近年の宗教改革研究では ARCHIVE FOR REFORMATION HISTORY 100号(2009年)で多数の国の宗教改革研究回顧が行われていたように、ドイツ以外の宗教改革にも関心が向けられるようになってきている*1。アッポルド氏も『宗教改革小史』でスカンジナヴィアやハンガリーの宗教改革に触れていた。しかし、概ねこれまでの宗教改革研究では、対象の範囲はヨーロッパ内部で広がってきた。
しかし、アッポルド氏はこの報告でヨーロッパを大きく踏み出し、宗教改革研究を全世界の歴史と結びつけて考えることを提唱していた。彼は冒頭でアンドレ・クロ―の16世紀は「出会いの世紀 century of encounters」だという言葉を引き、16世紀にはヨーロッパが中東や南アジア、東アジア、アメリカなど世界の様々な地域と遭遇したことを強調した。そして宗教改革はキリスト教共同体の再定義だという自身の見方に基づき、宗教改革はグローバルな出会いによって新しい共同体が生じるという16世紀に世界中で生じた大きな動きの一部だと考えられるのではないかという問題提起をしていた。
限られた時間の報告であったため、そのテーゼの詳細は語られず論の妥当性も不明だが、非常に刺激的な報告だと感じた。おそらく今後、このようなグローバルな観点に基づいた宗教改革像を論文や著書などのかたちで公開して下さると思うので、楽しみにしている。
その後も、イングランド、スカンジナヴィア、南ドイツ、オランダと幅広い地域での様々なテーマについての報告が続き、大変勉強になった。