ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

初期資本主義への不安?

文書館でしばらく文書を読んだ後は、バーバラ・シュトルベルク−リリンガー先生のゼミに行きました。授業は、先生が、昨日ご紹介したハムの論文の重要な部分について学生に意見を求め、より論文の内容の理解を深めるというものでした。

しばらくは、論文に沿って話が進んでいたのですが、途中で先生が宗教改革の時代に広がっていた終末論は、どのような状況を背景にしていたのかを問題にすると、論文からしばし脱線し議論が進んでいきました。

先生は、この時代の終末論の背景にあるのは、初期資本主義、あるいは貨幣経済の浸透によって社会が根本的に変化することに対する不安だと説明していました。

この説は、ハムの論文には全く出てきません。ハムは、論文の中で、宗教改革は、ありとあらゆる立場、身分、階層の人をひきつけた運動であり、真の信仰、そして救済への渇望が彼らを突き動かしていたと書いているので、ハムの意見とはかなり違うと言えます。

そのため、初期資本主義が引き起こした社会の変化による人々の不安を終末論の広がり、さらに宗教改革への渇望へと結びつけたのは、先生個人の考えによると思います。

私は、この説を聞いて少々驚いたのですが、それは宗教改革が広がった理由を、このように社会経済的な変化に求める説を、最近余り聞いていなかったからです。

簡単な説明しかされなかったので、どのような論理、あるいはどのような研究に基づきこのような説を唱えたのかは分かりませんでしたが、このような説明の仕方は、一見マルクス主義的にも感じられ、少々古めかしく感じられないことはなかったです。

しかし、先生は、当然新しい研究に基づいて説明したはずですので、先生の話を聞きながら、私はより詳しくこの説について知りたいと思いました。

先生は宗教改革ではなく、17世紀や18世紀の専門家ですので、ほぼ間違いなく、他の研究者の研究結果を参考にして、前述の説明を行ったはずだと思い、授業の後質問し、参考文献を教えていただきました。

終末論の広がりは、私が非常に興味を持っているテーマですので、早速文献を手に入れ、読みたいと思っています。