ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

山内昌之『歴史の作法 人間・社会・国家』文春新書

この本は、イスラム史の大家の方が書いた、歴史学の意味と使命を考えた著作です。記述は、洋の東西を問わず、様々な歴史家の主張を紹介していくことで進んでいきます。基本的に、自分の考えを論証していくというよりは、色々な人の考えを紹介し、自分の考えもそのような人たちと共通しているという風に、論理と言うよりは、共感を元に論述がなされていると感じました。そのため、この本だけを読んだだけでは、著者の考えの是非については、判断が出来ない著作ではないかと思います。

著者は、とにかく博覧強記で、日本、中国、中東、西欧の歴史家の言説を、これでもかというくらい紹介しまくります。余りに色々な人の言説が矢継ぎ早に紹介されるので、私のような凡夫には、どのような脈絡があるのかどうか良く分からず、論旨を追うのが非常に難しく困りました。

そのため、本筋とは関係ないトリビアを楽しむなどして読んでいました。たとえば、ランケの『自伝』には、反オスマントルコ的な感情が表れているとか、トクヴィルイスラム教を最も忌まわしい宗教だと考えていたことなどは、「へえ」というか「さもありなん」という感じで読みました。