ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

経済学を囓ってみる

この本の目的は、お金がない人を助ける具体的な方法を提示することではなく、お金がない人を助けることの経済学的な意味を考えてゆくことである。キーワードとなるのは、インセンティブと因果関係である。身近にあるさまざまな格差を経済学で考えてみることで、経済学的センスを体得していただければ幸いである。(xiv頁)

この本では、社会の様々な場面で、金銭的インセンティブ、あるいは非金銭的インセンティブによって、人はどのように動くかという因果関係を明らかにし、その因果関係に基づき、人々の行動を制御するための対策を考えるという、経済学的な考え方を説明した本です。最近巷で話題のスティーブン・レヴィットの『ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』なんかも、この本と似たような感じなのでしょうか。


パペッティア通信さんの書評では、

ただ、どうだろう。人々のインセンティブ構造を正確に測定して、その構造をかえてゆくことによって、人々の行動そのものを変化させていく…この発想は、どんなに有効な社会設計のアプローチであるとはいえ、なかなかムカつかせるものがあるのではないだろうか。我々は、知らず知らずの内に、見も知らぬ制度設計者がもくろんだ、身体内のインセンティブ構造への働きかけを通して、行動が制御されてしまっているのだ。

とありますが、私にも、そういう気持ちがないことはないというか、大いにあります。そのようなムカつきは、人間はどのような存在であるかという根本的な価値感に触れるからこそ生じるものなので、なかなか抑えるのは難しいような気もします。とは言うものの、人間の行動を因果関係の束に解体し、操作するということが行われないならば、それはそれで大変非合理的で、悲惨な結果を生みかねません。ムカつきというのは、単なる気分の問題と言えばそうなので、漫画を読んだり*1、映画を観たりして気分を晴らし、人々の行動を大いに制御できるように、様々な制度を作り上げること、あるいはそのような制度設計の仕方を支持することが、より社会的に有用だと考えるべきなのでしょう。

*1:たとえば、『One Piece』や『ホムンクルス』とか。