ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

16世紀の個人学校

ずっと断片的にしか読んでいなかったケルゼンブロッホというカトリックの学校の校長先生が書いた年代記のドイツ語訳を最初から読んでいるのですが、自分の研究と直接関係ないところでも、面白い記述がてんこ盛りで、史料を読み始めると、検討したいテーマが爆発的に増えて行くなと思う次第です。

史料を読んでいてかなり意外に思ったのは、ミュンスターではこの年代記が書かれた16世紀の70年代に、ほとんど全ての通りに個人教師が教える個人学校(Winkelschule) があったことです。私は、子供の教育と言えば、教会や修道院付きのラテン語学校に、良家の子弟が通うだけで、それ以外に学校教育はほとんど存在しなかったと思っていたのですが、ミュンスターにも沢山個人学校があったようです。

彼は公的学校の校長先生だけあって、商売敵である個人学校に批判的であり、個人学校を全部廃止して、公的学校に通わせるように訴えかけています。そのため、彼の記述からは、個人学校の内実がどうであったかは、ほとんど分かりません。

困ったときのWikipedia ということで検索してみると、個人学校は、16世紀初頭のオランダから始まったようです。ミュンスターはオランダのすぐ近くだったので、早い段階から個人学校があったのかもしれません。

私はこのあたりの事情をまだ全然知らないのですが、それほど沢山の個人学校があったならば、かなり高い割合の子供が、個人学校で教育を受けていたはずです。一般に宗教改革によって教育が盛んになり、識字率も上がっていったと言われていると思いますが、宗教改革とは関係ないところで出てきたと思われる個人学校が、16世紀社会でどのような役割を果たしていたかは、調べてみると凄く面白そうだなと思います。

日本でも、どなたかが、近代イギリスの個人学校である「おばさん学校」について論文を書いてらっしゃったと記憶していますが、オランダやドイツの個人学校に関する研究も探してみたいと思いました。