集団思考
リスキーシフト(risky shift)は、社会心理学の用語。 普段は穏健な考え方をし、比較的節度を守って行動することのできる人が、大勢の集団の中では、その成員が極端な言動を行なっても、それを特に気に掛けもせずに同調したり、一緒になってそれを主張したりするようになっていくことをいう。「集団思考」(groupthink)として知られている現象のひとつで、ストーナー(J.F.S.Storner)が1961年に報告した。
これは集団の中で同時発生的にも、又、個々別々にも生じてくる。集団の全員が、より保守的もしくはより自由主義的な立場に自分の見解を変更し、それによってそのケースでは、客観的には全く間違いとしかいいようがない集団の中での合意が形成されてしまうというものである。つまり、個人であれば犯さないような間違いを集団の中では、次第に危険度(リスク)の高い方向に言動が傾斜していく事である。つまり、個人が個々に質問を受ければ、そのような事は起こらないのだが、集団が集団として何らかの決定に関しての議論の経過で、性急に合意形成を図ろうとした場合に、このような事が起きやすいといわれる。
リスキーシフトは、コーシャスシフトと合わせて集団極性化現象(group polarization)と呼ばれる。これは集団の成員の初期傾向に依って、集団の討議が、より危険の高いような決定や、もしくはより保守的な決定に傾斜していく事を言う。これらは、インターネットの掲示板や特定の集団が、社会から孤立した状況の中で重要な合意形成を迫られている時などに起こりやすい。例えば、ネットの自殺願望を持った人達の掲示板、あるいはジョン・F・ケネディ大統領の時のキューバ危機、あるいは単純にはワンマン社長とその取り巻きの放漫経営による会社経営の破綻などが挙げられるだろう。
参照:集団思考、集団心理、群衆行動の社会心理、群集行動を引き起こす原因、集合行動
集団思考に対抗し、少数派が多数派の意見を覆すための条件。モスコビッチによる「行動の文法」。
- 多数派の規範を切り崩し、多数派に葛藤を生じさせ、彼らがもつ社会的現実を切り崩すこと
- 少数派が一貫して安定した代替的規範を提供し、しかもその主張にコミットメントすること
(マースとクラーク三世、一九八四)
池田謙一『社会のイメージの心理学 ぼくらのリアリティはどう形成されるか』サイエンス社、1993年、69頁