ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

「回顧と展望」に見る若手研究者の問題点

「回顧と展望」では、私は中近世のドイツ史を中心に見るのですが、近代の「ドイツ・スイス・ネーデルラント」という項目に興味深い記述がありました。

近年、外国語の文書館で日本からの研究者らしき人々の姿を頻繁に目にするようになった。一次文献へのアクセスは年々容易になり、それをもちいた研究の質はあきらかに「向上」はしているだろうが、同時にわれわれは「まず文書館ありき」という強迫観念にとらわれてはいないだろうか。(中略)それら文書館への異常ともいえるこだわりが、(特に若手研究者にとっては)研究者が本来積むべき研鑽の中途部分をスキップさせてしまってはいないだろうか。もし評者のこの指摘が的を射ており、しばらくこの傾向が続くのであれば、今後研究者の基礎体力が低下していくことは必至であろうし、外国史としての歴史研究に取り組むわれわれが本来重視すべきである、論文執筆の動機や意図、そして歴史の全体像を示すという作業がおろそかになる危険もある。一次文献を利用して論文の精密さを向上させるということのみに気を取られるようでは、「論文のための論文」が量産されることにならないだろうか。日本の読者に(そして、国外に向けて情報を発信しているというのであれば、もちろん外国の読者にも)「知的興奮」を与える研究が減少していくのではないかという、強い危惧を抱く。

進藤修一

これを読んで、文科省の方々や査読誌の担当教員の方々が心を入れ替えてくれると、若手研究者は手書き文書を読まずにすむようになるので、論文を書くときの負担が減りますね。