久慈利武氏による合理的選択理論のサーベイ論文
三重大学紀要に掲載された久慈利武氏の諸論文をインターネット上で読むことが出来ます。(リンク)
ジェームズ・コールマンの『社会理論の基礎』についての記述です。
このような相互依存の分析を、社会学の研究対象である非市場的・非貨幣的な相互行為一般についてもつくりあげようとするのが、彼のねらいである。彼はそのような非市場的・非貨幣的な相互行為を社会的交換としてとらえる。彼のそれは社会的資源の交換である。彼は一方では、新古典派経済学の方法論的個人主義に深くコミットするが、他方では通常の合理的選択理論家と異なり、前者に欠ける、導入必要な要因としてパーソソズ流のメデアとしての「権力」「影響力」の概念を受け入れる。すなわち社会システム内の個人行為者は、個人単独の意志だけで自らの行為をコソトロールすることができず、他者の意志を受け入れながら行為しなければならない。しかも「合理的選択」理論であるかぎり、個人行為者は合理性を貫徹しながらそれをする、という状況を想定しなければならない。そのため彼の社会的交換理論は、通常の合理的選択理論と異なり、「権威関係」と「信頼」と「規範」を基礎に構築されている。