ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

ビザンツ史研究の問題点

一年に一度、日本の歴史学を概観するための貴重な機会となっている「史学雑誌 第117編 第5号」の「2007年の歴史学界−回顧と展望−」ですが、今年はビザンツ中世史で重大な問題提起がされていました。

「回顧と展望」記事の執筆はきわめて重い仕事であるが、評者はあえてわが国のビザンツ史研究の全般的な問題点を糸口としたい。それは、研究者に社会や学会全体から要請されるべき学問的誠実さが、しばしば蔑ろにされてきたことである。明らかに剽窃や盗用に該当するような行為、欧米の著名な研究者の学説をあたかも自説であるかのように語る行為、自説に都合のよいように研究史を恣意的に改変・軽視する行為に対し、警鐘を鳴らしたり自重を求めたりする意見がこの場で表されることはほとんどなかった。こうした学問的不正が、日本語で書かれた業績が欧米の学者からは一切参照されず、加えて国際的な学術交流も乏しいという、学会の特殊な構造に起因することは明らかである。わが国のビザンツ史研究は、学としての厳密さを犠牲にすることなく、他の領野に対して今以上に開かれるべきであろう。(328頁)


ビサンツ史では剽窃や盗用が少なからず行われているというこの問題提起を書いたのは、橋川裕之さんです。私は、ビザンツ史の状況を全く知らないので、上の批判が妥当かどうかは分かりませんが、もし事実だとするならば、大変勇気ある批判だと思います。