ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

コールンヘルトと矯正の家

ゲレメク『憐れみと縛り首』平凡社、1993年 をぺらぺらと適当に読み返していたら、16世紀オランダの人文主義者ディリク・コールンヘルトが、1587年の論説で、「社会政策を懲罰的に応用して自由の剥奪と矯正労働とを連結しなければならないと述べている。」(301-302頁)という記述が目に入った。

著作名が挙がっていないが、これかな。
Coornhert, Dirck Volckertsz, Boeven-tucht ofte middelen tot mindering der schadelyke ledighghanghers, Amsterdam, Harmen Jansz Muller, 1587

近世では、貧民の怠惰を矯正するために監禁し、強制労働を行わせるという「矯正の家」「労働の家」が作られたが、コールンヘルトの考え方も同様だったようだ。コールンヘルトと言えば、16世紀人には珍しく、教会に関わりなく全キリスト教徒、さらには無神論者に対してすら寛容な態度を示した近世寛容論者の代表だが(カメン『寛容思想の系譜』201頁)、貧民には寛容ではなかったようだ。