義認についてカトリック、ルター派、メソジストが合意
世界的に進む教会の一致、日本教界の進むべき道は?
2006年09月14日 10時42分
今年の7月末に行われた第19回世界メゾシスト大会で歴史的な合意が為された。カトリック、メソジスト、ルーテル教会代表(キリスト教一致推進評議会議長のヴァルター・カスパー枢機卿、メソジスト世界教会協議会のサンデイ・ウンバン会長、ルーテル世界連盟のイシュマエル・ノコ総幹事)は義認教義に関する共同宣言(Joint Declaration on the Doctrine of the Justification)に署名した。
この署名は、ルターの宗教改革以降、新旧教会間の数多くの迫害と戦争、憎悪の原因となった最も核心的な神学的相違である「義認(Justification)」の教義について、新旧教会の代表的な三つの教会が合意に達したものだった。
(中略)
教義は教派ごとに異なるだけに、教義の一致は非常に困難だった。しかし教義のルーツにさかのぼり源である「福音」を見るときに教会一致は可能になる。今回の共同宣言もそのような次元で行われたと言われている。
今回の共同宣言では、カトリック側は「信仰」に「愛」と「希望」が共存する事実は認めながらも、「信仰による義認」は決して「聖化(愛と希望)」に依存しないという立場を表明し既存の主張を譲歩した。一方、ルーテルとメソジスト側は「信仰による義認」と「聖化」は区別されるが分離すべきではないという、「聖化」を以前より強調する立場へ譲歩した。
今後も、カトリックとルーテル、メソジストの間で他の神学的相違についても協議が続けられ、カトリックとプロテスタントの歩み寄りが強まる展望だ。
近年、カトリックでは改革が進んでいる。例えば、ユダヤ人迫害の関与、十字軍戦争、宗教裁判、帝国主義的文化宣教などの歴史の中で行った過ちを公開の場で認めた。更に、一般信者の使徒職を強め、教皇に全権が任された中央集権的体質から地域分散型に転向していると言う。プロテスタント側も今後カトリックへの偏見を捨て、カトリックの変化を汲み取って相互和解の道へ進むと思われる。
上述の共同宣言とはやや別次元の話ではあるが、近年急速に進んでいる福音主義グループの教会一致運動も注目すべきだ。特に世界福音同盟(WEA)を中心に史上最大規模のキリスト教共同体ネットワークの構築が進められている。
WEAは改革派だけでなく、今世紀半ばから全世界で活発に広まりつつある「第三の波」、「カリスマ運動」として知られる新しい聖霊運動の、ペンテコステ派、カリスマ派教会との連合を進めており、今後これらの教会同士の一致協力が作り出す新しい動きに期待がかかる。
この間は、イスラム関係で、ケチを付けたカトリックですが、実際には、他宗教との対話、さらにキリスト教内での和解も、着々と進んでいるようです。エキュメニカルな動きが加速しているのは、おそらくは、キリスト教が西欧の社会の中で、影響力を着実に弱めつつあり、一宗派だけで安穏としていられる状況ではないからでしょう。私が研究している16世紀には、カトリックとプロテスタントが骨肉の争いをしていたことを考えると、隔世の感があります。かつてと比べると、教義というものは、社会的、あるいは宗派内において、それだけ重要性を失ったということなのでしょう。