ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

Dat boek van veleme rade, Dil Ulenspiegel, das narren schyff en Reynke de vos

表題の車Rad とはさまざまな車のことであり、それぞれの車はひとつの身分を示す。はじめの五つの車は教皇と聖職者、皇帝と諸侯、貴族、市民、農民であり、これらが水車、歯車、風車、車輪、すき車に当たる。これらの対して別の五つの車が対置される。それは女(動輪)、子供(糸巻車)、といった身分制秩序の外にある者たちである。さらに魔術師・悪しき助言者Ratgeber (Lückerrad)、愚者 (Sparen-und Dorenrad)、最後は詐欺師・盗人 (こわれた車)でこれがわが世界の悲しき一面一般を包括し、そこに再び諸身分の全体が反映される。最後の三つは悪魔の働き (悪しき助言Rat・犯罪) を示している。これらが動くさまは水車の動きによって示され、それが国家の動態を意味している。この車の比喩による社会の描写は全くボーテ独自のものである。

阿部謹也訳『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら岩波文庫、1990年、420-421頁


この『車の書 Dat boek van veleme rade』を書いたヘルマン・ボーテは、かの有名な『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』の著者でもあります。現代ドイツ語訳は、ネット上でも読めます。原文は、ネットでは読めないのでしょうか。

セバスチアン・ブラントの『阿呆船』も、ネット上で読めます。最近は、有名作品なら、ネット上ですぐに見つかるというのが凄いですね。

おまけに、低地ドイツ語文学の代表作「Reynke de vos」も。