ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

社会変化の単位

歴史学は、基本的に変化を扱う学問なので、社会変化についてのモデルは、歴史学の理論の根幹に関わると言えます。そのためでしょう、この本の最後に社会変化についての章が置かれ、なおかつ中味も非常に濃いと感じました。

上のレジュメの記述を見ていただければ分かるとおり、基本的に、上で扱われているのは、「国家」を単位としたマクロな社会変化です。しかし、バークは、必ずしも、変化する社会の範囲、規模について気を払っているとは言えません。国家レベルでの変化、地方レベルでの変化、文明単位での変化を説明するモデルが、時として混在しています。

しかし、国家というのはそれ自体相当に大きな単位ですが、特に前近代社会においては、その国家内には、非常に様々なより小さな社会、あるいは文化的な単位が存在しています。それらを同じ「社会」として相似的に考えられるでしょうか。あるいは、そのような異なった社会の変化同士、たとえば、ある一つの都市で生じた社会変化と、国家レベルの大きな変化を、相似的に考え、他の社会の変化に適用していくことは有効でしょうか。

研究対象となる社会の規模がより小さくなったり、扱う時間的な射程が短くなれば、社会変化はより頻繁に生じるということになりますが、このような小規模な社会の変化で、「持続と変化」「内的要因と外的要因」「構造と出来事」などの問題をどのように考えられるのでしょうか。社会変化を全く伴わない事件は存在しないと考えられますが、ではどのような条件を満たせば社会の「変化」が生じたことになるのでしょうか。

社会の変化を、ミクロのレベルでどのように説明していくかというのは、考えてみると、なかなか厄介な問題だと思います。しかし、マクロにせよ、ミクロにせよ、社会変化について考える際に、バークのまとめは、色々と示唆的だとも思います。今は、直接自分の研究に役に立たないにしても、いずれ役に立つ日も来ようかと思います。