ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

ケルン市立歴史文書館が崩壊

ドイツの大都市ケルンの市立歴史文書館が崩壊するという事件が起こりました。

【3月4日 AFP】3日、ドイツ西部ケルン(Cologne)で3日午後2時(日本時間同午後10時)ごろ、同市の史料館が入った4階建ての建物と隣接する集合住宅などが崩壊し、最大で9人が行方不明となっている。

 史料館付近から不信な音がし始めたため崩壊直前に警告が出され、近隣住民らは避難していた。また近くの小学校は、崩壊が起きた時間までに終わっていたと、現場でAFPに応えた同市広報担当者は語った。負傷者は出ていないという。

http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/accidents/2578077/3877418


何が起こったかは、とりあえず映像を見ていただければ分かります。文書館は完全に瓦礫の山になってしまいました。


地下鉄の工事が原因ではないかという話もありますが、いずれにせよ現在文書館があった場所は瓦礫の山になり、膨大な量の史料が土の中に埋まったままです。

文書館が崩れるというのは、歴史学者にとってはこれ以上ないほど恐ろしい悪夢です。歴史は史料に基づいて書かれるので、史料状況が変われば必然的に歴史記述は変わります。我々は歴史記述を通してしか歴史を認識できませんので、文書館の史料が大量に失われれば、文字通り歴史が根本から変わりかねないわけです。

ケルンは中近世を通じてドイツ最大の都市の一つであり、ヨーロッパを東西南北に結ぶ交通の要に位置する国際都市です。その意味ではケルンの歴史が失われることは、ドイツのみならずヨーロッパの歴史の決定的に重要な一部が永遠に失われるということです。

おそらく今回のケルン市立歴史文書館の崩壊は、世界遺産となっているケルン大聖堂の崩壊よりも遙かに深く甚大な損害を、ヨーロッパの学問と文化に与えると思います。これは本当に取り返しのつかない、ヨーロッパや人類の文化に甚大な被害を与える、途方もないカタストロフだと言わざるを得ません。

私としては、少しでも多くの史料が助け出されることを、ただ祈るのみです。


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