ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

ノルトキルヒェンの水城

日曜に、ミュンスターから数十キロ離れたノルトキルヒェン Nordkirchen で水城 Wasserschloß を見てきました。ミュンスターラントは、真っ平らな土地で、山や丘がほとんどないので、ライン川沿いのように、山の上に城塞を築くことが出来ません。そのため、ミュンスターラントには、周囲を堀で囲み、外から攻められたときの防御手段にしている水城がたくさんあります。ノルトキルヒェンの宮殿は、ヴェストファーレンヴェルサイユと呼ばれる、ミュンスターラント最大のバロック宮殿です。こう呼ばれたのは、単に壮麗だからだけではなく、実際にフランスのヴェルサイユ宮殿を手本にして作られたからだそうです。

この宮殿が造られたのは、18世紀初めのことです。ミュンスター司教フリードリヒ・クリスチアン・フォン・プラッテンベルクが1703年に作らせたそうです。ミュンスターの司教の宮殿は、街中にあったので、第二次大戦時の爆撃でほとんど破壊されてしまったので、実質的には戦後の建物で、外は立派ですが、中は極普通という、張りぼてのようなものです(ミュンスターは街並みは古い感じですが、実は二次大戦時の爆撃でほとんど破壊されたので、古い街並みは見た目だけで、実際はとても新しいです)。しかし、ノルトキルヒェンの宮殿は、田舎にあったためか、爆撃を受けなかったようで、当時のままの姿を今でもとどめています。

この宮殿は、普段は大学の校舎として使われているので、平日は予約しないと、宮殿の中を見ることはできません。しかし、日曜だけは、11時から17時まで予約なしで見学することができます。毎時0分に、2ユーロを払い、ガイド付きで礼拝堂から出発して、建物の中を一通り見学することができます。

ヴェストファーレンを代表する建築家が設計したという小さな白い礼拝堂も綺麗ですし、宮殿の中も天井画や絵画、様々な装飾で彩られており、かなり立派なものでした。もちろん、地方の宮殿ですから、他の名だたるバロック宮殿には遠く及びませんが、それでもこんな辺鄙な片田舎に、これほどのバロック宮殿があるのは驚きです。個人的に印象的だったのは、木の柱に彩色をして大理石のように見せかけた柱でした。

聞けば、昔皇帝も何度もここに泊まったそうで、皇帝が泊まった客室は、皇帝の部屋と名づけられているそうです。あとは、ある部屋にピアノが置いてあったので、もしかするとこの部屋でピアノのコンサートがあるのかもしれないと思いました。装飾覆われた白い天井、天井の神話的な天井画、壁を覆っている手の込んだ刺繍の付いた壁布、貴族たちを描いた絵画、大理石の暖炉などに囲まれて音楽を聴くのは、たいそう贅沢だなあと思いました。

この宮殿は、庭園もかなり大きく、刈り込まれた立木によって作られる幾何学紋様が美しいバロック庭園もなかなかのものでした。隅々まで、良く手入れされており、結構お金があるのだなと思いました。

このようになかなか見どころが沢山の宮殿なのですが、残念ながら交通の便が非常に悪いです。ミュンスターからだと、バスの乗り継ぎか、電車でCapelle という駅まで行き、そこからバスに乗り継ぐことになります。しかし、平日はともかく、日曜は、非常に行きにくいです。結局、行きは、親切な人の車に乗せてもらい、帰りはタクシー・バスというものを電話で呼び、ようやく帰りました。

http://www.muensterland-tourismus.de/kultur/schloesser/schlossdb/nordkirchen_schloss_nordkirchen.html