ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

言葉は毛繕いの代わり?

ダンバーという研究者によれば、人間の言語が生まれたのは、社会的な紐帯を保つためだそうです。集団で生活する霊長類は、毛繕いという社会的コミュニケーションを通して集団のメンバー同士の相互信頼を増大させるそうです。しかし、集団の規模が大きくなりすぎると、毛繕いをしてコミュニケーションを取るために、余りに時間と労力が掛かりすぎてしまうため、毛繕いよりも効率よくコミュニケーションできる言語が発達したのだそうです。また、誰が信用できるのか、できないのかを情報交換するために、噂話を行うようになったそうです。

この説を鑑みると、特に私的なコミュニケーションでは、一見それ自体は有用性がないように見える、とりとめもないおしゃべりや噂話が支配的であることにも納得が行きます。つまり、話している内容ではなく、話していることそれ自体が言語によるコミュニケーションの目的と言うことになるのでしょうから。ハイデガーなどはこのようなおしゃべりを空談と呼び、人間の本来性から外れた頽落したかたちだと述べましたが、進化心理学の知見は全く逆のことを述べているということになりそうです。

ダンバーの説が正しいかどうかには疑問も出されているようですが、面白い話だと思います。


ことばの起源―猿の毛づくろい、人のゴシップ

ことばの起源―猿の毛づくろい、人のゴシップ