ミュンスター再洗礼派研究日誌

宗教改革の少数派である再洗礼派について紹介していきます。特に16世紀のミュンスターや低地地方の再洗礼派、17~18世紀のノイヴィートの宗教的寛容を研究中。

2008-01-01から1年間の記事一覧

歴史学界に対する問題提起

「回顧と展望」の「歴史理論」の項で、羽田正先生は、現在歴史学を専攻する学生数が減っており、グローバルCOEに歴史研究を主体としたプログラムがなく、歴史書の売れ行きが芳しくないと、歴史学が学生からも、行政からも、一般読書人からも魅力や社会的意義…

ビザンツ史研究の問題点

一年に一度、日本の歴史学を概観するための貴重な機会となっている「史学雑誌 第117編 第5号」の「2007年の歴史学界−回顧と展望−」ですが、今年はビザンツ中世史で重大な問題提起がされていました。 「回顧と展望」記事の執筆はきわめて重い仕事であるが、評…

宗教改革とお金の問題

Den Himmel kaufen. Heilskommerzielle Perspektiven des 14. bis 16. Jahrhunderts, in: Jahrbuch für Biblische Theologie 21 (2006)ベルント・ハムのこの論文は、贖宥状批判に関する以下の論文と合わせて、宗教改革研究者必読論文になっている予感が。Win…

男女間の争いをテーマにしたシンポジウム

Arbeitskreises Geschlechtergeschichte der Frühen Neuzeit (AKGG-FNZ)が、11月にシュトゥットガルトで男女の争いをテーマにしたシンポジウムをやるそうです。報告申し込みは終わってしまいましたが、面白そうなシンポジウムなので、ドイツ在住の方が参加…

地方は衰退する一方

ニュー速クオリティーで「地方の過疎化が止まらない・・・ 中心街ですら出店者は現れず 」というスレが紹介されていました。その中で、「人口減少下における地域経営について 〜2030年の地域経済のシミュレーション〜」という調査報告が紹介されていまし…

聖公会が分裂の危機

同性愛者の主教の叙階や同性愛者同士の結婚を祝福することに反対する保守派が、聖公会内に新たな協議会を作ろうとしているそうです。 全世界約8000万人の英国国教会(聖公会)信徒のほぼ半数を代表する『GAFCON』(グローバル・アングリカン将来会…

プロテスタント教会の統一

ザクセンとチューリンゲンのプロテスタント教会が統一するようです。この両地域は、別々の信仰告白を持っているそうですが、信徒数の減少に伴い、収入も減少しているので、いっしょになって行政コストを削減したいのだそうです。世知辛いですね。FAZ「Kirche…

「宗教と社会」学会学術大会におけるテーマ・セッション

科学と宗教の問題に関心がある人にとっては宝の山である、南山宗教文化研究所「科学・こころ・宗教」プロジェクトのブログで、「宗教と社会」学会学術大会におけるテーマ・セッションのレポートが上がっていました。「テーマセッション「日本における「科学…

文献

Politics and Reformations: Communities, Polities, Nations, and Empires. Essays in Honor of Thomas A. Brady, Jr., Edited by Christopher Ocker, Michael Printy, Peter Starenko, and Peter Wallace Urszula Szulakowska, The Sacrificial Body and t…

2009年4月に西洋中世学会発足

来年2009年4月に、新しく「西洋中世学会」が発足することになったそうです。 西洋中世学会設立の趣旨 本学会は、日本における西洋中世研究(歴史、文学、哲学、美術、音楽など)を、質量ともに一層進展させるために、全国各地に散らばる研究者相互の交流を促…

東アジア人は背景を見るが、北米人は人を見る。

「南山宗教文化研究所「科学と宗教」プロジェクトBLOG」で、WIREDの文化心理学に関する面白い記事が紹介されていました。 「東アジアの人のほうが、より全体に注意を向け、人間を他者との関係の中で捉えるようだ」と、論文執筆者の1人である増田准教授はプレ…

6月14・15日に「宗教と社会」学会第16回学術大会「日本における「科学と宗教」の対話の意味を問い直す」

ちょうど来月南山大学で、「日本における「科学と宗教」の対話の意味を問い直す」というシンポジウムが行われるそうです。参加するには事前申し込みが必要だそうですが、上のmacskaさんの記事に興味を持った方は行ってみてはどうでしょうか。 ◆日本における…

山岸俊男の論文とインタビュー

日本の社会的ジレンマ研究の第一人者である山岸俊男先生のサイトで、過去に発表された論文がpdfファイルでダウンロードできます。 審査付き論文 紀要論文 また、「日刊イトイ新聞」で、長文のインタビューがありました。 信頼の時代を語る。山岸俊男さんの研…

アメリカの無神論者グループ

「macska dot org」さんに、アメリカで最近ドーキンスやヒッチェンスらの論に影響されて、新しい無神論者のグループが出来ているという記事がありました。このようなグループが今アメリカでどの程度の勢力を持っているのかはこの記事からは不明ですが、無神…

北海道大学の社会心理学のCOE

山岸俊男先生が率いるCOEのサイトで、膨大な研究成果を見ることが出来ます。 グローバルCOE「心の社会性に関する教育研究拠点」 21世紀COE「心の文化・生態学的基盤」 北海道大学社会科学実験研究センター また、北大の若手研究者による以下の論文集は、歴史…

久慈利武氏による合理的選択理論のサーベイ論文

三重大学紀要に掲載された久慈利武氏の諸論文をインターネット上で読むことが出来ます。(リンク)ジェームズ・コールマンの『社会理論の基礎』についての記述です。 このような相互依存の分析を、社会学の研究対象である非市場的・非貨幣的な相互行為一般につ…

伊勢田哲治氏の諸論文

伊勢田哲治氏のサイトでは、これまで公表されたかなりの論文を読むことが出来ます。個人的に関心があるのは、以下の諸論文です。 「ベイズ主義の社会化はいかにあるべきか - リーバイのモデルの検討を通して -」 「認識論における非個人主義的内在主義」 「…

岩波講座哲学第11巻「歴史/物語の哲学」

歴史/物語の哲学 展望 歴史を書くという行為―その論理と倫理 野家啓一 I 歴史というトポス 1 西欧(オクシデント)の歴史意識 三島憲一(東京経済大) 2 「オリエント」の歴史意識 大塚和夫(東京外語大) 3 歴史の必然性について 北川東子(東京大) 4…

ヨーロッパ人が忙しくない4つの理由

藤井敏彦さんがヨーロッパ人が忙しくない理由を四つほど挙げていました。本当かどうかは良く分かりませんが、そうかもと思わされます。 理由1:自分に甘く他人にも甘い 理由2:同じ仕事をずっとやる 理由3:権限委譲が徹底されている「ヨーロッパ人が忙し…

ノルベルト・エリアスの「図柄」と「定着者と部外者」

このあたりを考えるための参考になればと期待。 「図柄figuration」という概念を、人間の相対的自立性と相対的依存性をその相互関係のなかで捉えるために用いる。このモデルを借りることで、相互依存関係の鎖の内部における個々の個人が持つ自由に決定できる…

須原一秀氏による覚悟の自死

『高学歴男性におくる 弱腰矯正読本―男の解放と変性意識』や『〈現代の全体〉をとらえる一番大きくて簡単な枠組―体は自覚なき肯定主義の時代に突入した』という面白そうなタイトルの著書を出していた哲学者須原一秀さんが、自ら命を絶っていたそうです。とは…

再洗礼派図書館「フリードマン榊原ライブラリ」見学レポート

方南町にあるメノー派教会には、「フリードマン榊原ライブラリ」が併設されています。これは、アメリカのメノー派研究者であったロバート・フリードマンから寄贈された蔵書と日本の再洗礼派研究者であった榊原厳の蔵書を集めた図書館です。おそらく、日本で…

アメリカプロテスタントの衰退

◎米プロテスタントがヒスパニック系移民の急増で過半数割れ目前 【CJC=東京】米国民の約8割を占めるキリスト者のうち、白人信者を中心に多数派を維持してきたプロテスタントの比率が過半数割れ目前にまで下がったことが、『米宗教概観調査』2008年…

創造説専門の学術雑誌「アンサーズ・リサーチ・ジャーナル」

創造説の立場に立った学術論文を集めた査読誌が創刊されたそうです。 【CJC=東京】米国の『アンサー・イン・ジェネシス』が、創造論に関するオンライン専門誌『アンサーズ・リサーチ・ジャーナル』(ARJ)を創刊、1月にインターネット上に登場した。…

内集団と外集団の境界はいかに引かれるか

内集団と外集団の境界は、一つの集団を考えた場合には自明ですが、実際の社会ではそう簡単には境界線を引けないことも多いです。というのは、複数の集団がより大きな集団を作ったり、ある集団の成員が各々他の様々な集団に所属することもあるからです。この…

アフリカの部族対立の起源

東芝が発行している「ゑれきてる」というオンラインマガジンで、「問われる歴史学の方法論」という特集があり、その中で松田素二さんによるアフリカの部族についての記述がありました。 私がフィールドワークをつづけている西ケニアの場合、現在20以上の「…

ALDIとKaiserどっちで働きたい?

ドイツに行って思ったのは、店員や事務員が余り感情労働をやっていないことです。日本と比べると全般的に無愛想で、仕事も大雑把でいいかげんで、日本のサービスに慣れていると、何て酷いと思うようなことも良くあります。そして分かったのは、別に店員や事…